…祖母の寝巻の襟の中に、僕の手は不埒にも潜り込んでいた。
マシュマロのように柔らかで、すべすべとした祖母の乳房を、僕の手の指はし
っかりと捉えていた。
「あ…あんっ」
薄暗い灯りの中で、祖母の白い顔が小さく歪むのが見えた。
部区の手を握っていた片手を、漏れ出る声を塞ぐように自分の口に押し当てて
いた。
栄子という客の女性は、僕が夏休みに使っていた室で寝ている。
祖母のこの室から一間隔てたところだ。
声の聞こえる心配は先ずなかったが、同じ屋根の下は下だ。
不埒なことに、僕の内心はそのことにも妖しい刺激というか、興奮のようなも
のを密かにかんじていた。
栄子という女性の、色気もあまりなさげな丸い顔を、僕は祖母の乳房を弄りな
がら、何げに思い起こしていた。
「昭子…したい」
祖母の耳元に顔を突き当てるようにして、僕は声を潜めていった。
「だ、だめよ。お、お客が…」
潜めた声で慌てたような口調で、祖母は拒絶してきた。
「昭子が欲しいっ」
慌て狼狽える祖母の耳元に、僕は故意的に甘えるような声でもう一度いった。
「し、静かに…ね」
祖母は苦しく切なげな表情で折れた。
僕の手が、祖母の身体の下に伸びていた。
下腹部の辺りに、小さな布地の滑らかな感触があった。
その上を指で柔らかくなぞってやると、祖母の小柄な全身がぴくんと魚の鮎の
ように跳ねた。
ショーツを脱がし、僕は祖母の両足を割るようにして覆い被さった。
祖母の布団に潜り込んだ時から、僕の下半身のものは、すでに固く屹立してい
た。
布団の中で露わになった祖母のその部分に、僕の指はゆっくりと這い廻った。
口元を手で強く抑えたままで、祖母は目も固く閉じて何かに堪えていた。
伸ばした手をさらに下まで這わせると、指先に温かな湿りの感触があった。
女としての反応の湿りだと僕は確信した。
「昭子、濡れてるよ」
意地悪く僕がいうと、手で覆い隠した祖母の口から、言葉にならない呻き声が、
はっきりと僕の耳にまで聞こえてきた。
以前に、あの吉野氏の手で剃毛されている祖母のその部分は、まだ生えたての
ざらりとした感触だった。
両手で祖母の剥き出しの両足を押し開き、僕は腰を前にゆっくりと動かせた。
口を自分の手で強く閉じたままの、祖母の小さな顔が枕の上で大きくのけ反っ
ていた。
祖母の胎内に僕が侵入したのだ。
細い身体の上で祖母の乳房が、慄くように揺れ動いていた。
祖母の優しく包み込むような圧迫が、僕の固く屹立した皮膚全体にひどく懐か
しいような感覚で触れてきていた。
祖母のほうはもう、襲い来る官能の喜悦に、ただ堪えるだけが努めのように口
を手で押さえ目を強く閉じているだけだった。
その内、息苦しさもあってか、口に当てていた祖母の手が離れる時があった。
そこに僕からの強い突き上げがあったことで、
「ああっ…」
と堰を切ったような高い悶えの声が、室全体に大きく響いて聞こえ漏れた。
また慌てて口に手を戻す祖母だったが、薄い灯りの中でも、祖母の白い顔が羞
恥に赤く染まったのが僕にもわかった。
「気持ちいいのか?昭子」
腰の律動を続けたまま、祖母の顔に顔を近づけて僕が聞くと、祖母は手を口に
強く当てたまま、幾度も細首を縦に振り続けてきた。
「わ、私…は、恥ずかしくて…も、もう逝きそうっ」
祖母はそれだけを口の手を外していって、また口を手で閉じた。
「お、俺もだよっ」
そういってすぐだった。
背骨を伝って、何か稲妻のような光が身体の下に向けて走る感覚があったと思
ったら、唐突に熱い極まりの症状が僕を襲ってきた。
「昭子っ」
呻くような声を出して、僕は昭子の名を故意的に強く呼んで終わり果てた。
祖母は僕のほうが果て終える寸前に、意識を喪失させていて、暫くの間、死ん
だように動かなかった。
やがて意識を戻した祖母は、少し狼狽えたような表情で、
「私…声、大丈夫だった?」
と開口一番に、僕に問いかけてきた。
「うん、一回だけ凄かった」
冗談口調でそう返すと、
「ど、どうしよう…」
といって表情をさらに狼狽させた。
「いいじゃないか、知れたって。俺は昭子を抱けて大満足」
「ありがとう、私もよ。…あ、思い出したっ」
「ん…?」
「明日ね、私…吉野さんとこへいかなければいけなかった」
「どうして?」
「あの人、二、三日前に倒れて、床に伏してるの」
「ああ、癌とかいってた…」
「意識は戻ったんだけど、譫言で私の名前ばかり呼ぶんだって、ほら、あの古
村さんが、今朝知らせてくれて…」
「あ、じゃ、お、俺も昭子に付いてこかな?…その吉野さんって人の顔、もう
一度見てみたいし」
「か、かまわないわよ。明日のお昼過ぎくらいに出るけどいい?」
「了解」
祖母から預かったUSBメモリーから、吉野氏という人物の、まだほんの一端程度
しか知らないのだが、僕には興味と関心を抱かせる人のように思えたので、明日が
少し楽しみになり、同時に眠くもなってきたので、祖母の香しく優しい匂いの中で、
僕は瞬く間に深い眠りに堕ちた。
あくる朝、僕が目を覚ました時には、祖母はもう布団にはいなかった。
目を擦りながら居間に行くと、客の栄子さんが一人で座卓の前に座っていた。
おはようございます、の挨拶は栄子さんのほうが早かった。
僕も挨拶を返して座卓の前に座ると、栄子さんはいそいそと台所に向かい、どう
やら僕の朝食の用意をしてくれるらしかった。
ご飯の盛られた茶碗と、味噌汁をよそった汁椀を盆に載せて、居間に戻ってきた。
「あの、お婆さん、お寺に用があるとかいって出かけましたの。朝ご飯の用意頼
まれて、私」
栄子さんは遠慮感丸出しの小さな声でいいながら、茶碗と汁椀を僕の前に出して
くれた。
顔色は姉の尼僧に較べて、それほどの白さはないが、丸まった顔の頬の艶やクリ
っと目には、昨日の初対面の時には気づかなかった可愛さが垣間見えた。
そのせいかどうか、今度は僕のほうが妙に恐縮してしまい、祖母と一緒の時は、
いつも二杯は食べるご飯を一杯にした。
「あの、すみませんね。折角、お婆さんとこへ遊びに来られたのに、私のような
厄介者がいたりして…」
僕の斜め前で改めて正座し直して、栄子さんが僕に頭を下げて謝ってきたので、
僕も慌てて座り直し、
「全然、全然かまいませんよ、僕のほうは。ここへはいつでも来れますんで、ど
うか気にしないでゆっくりしていってください」
と逆に狼狽えた声で返すと、栄子さんも愛嬌のある笑顔を返してくれた。
ただ、その後で、ふいに何かを思い出したかのように、不思議な笑みを浮かべて
いたのは、僕にも少し気になるところだった。
室に戻り、持ってきたノートパソコンをバッグから出し、僕は午後から祖母と一
緒に訪ねる予定の、吉野氏のUSBメモリーを開いて画面に視線を向けた。
祖母から預かってから二、三度ほど、そのメモリーを僕は開いていて、データのあ
ちこちをスクロールして流し読み的に見ていたので、彼の私小説のサブタイトルで興
味のありそうなところを探してみた。
「親友」という短いサブタイトルがあったので、その部分をゆっくりとスクロール
すると、今の栄子さんのどこかへ逃亡している夫が直面している借金問題とか、やく
ざとか暴力団とかの物騒な文字がたくさん出てくるページがあったので、照準をそこ
に合わして目を凝らした。
そのサブタイトルの章の最後辺りに、竹野という聞いたような名前が何度も出てき
ているのも、僕は大いに気になったのだ…。
続く
(お詫び)
またまたの投稿ボタンの早押しで、読者の皆様にご迷惑を
おかけしました。
申し訳ありません。
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