由紀子が実家から帰ってきて、俊樹に自治会の様子を聞いていたが、美紀に欠席した事を謝ってくると言って、家を出て行った。
「それで、どうだった?」
由紀子が、興味深そうな顔付きで美紀に聞いた。
「それがね、ちょっと思ってたのとは違ってきちゃって。」
美紀が、バツが悪そうに返事する。
「どういう事?」
「実はね、バレちゃったの、ご主人が変質者の正体だって事が。」
「え~っ、で、でも、美紀さん、皆んなの前で辱めるだけだって…。」
「私は、そのつもりだったのよ。それが、ご主人ったら、あの時のショーツを穿いてたのよ。」
「まぁ。」
由紀子も、少しあきれた感じ。
「ご主人も、気付いてなかったみたいなんだけど、野球拳でズボンを脱いだ時にね、役員の中から声が上がったのよ、あの時のショーツだって。役員会で見せた動画を覚えてたみたいなのよね。」
「そ、それで、あの人、どうしたの?」
「認めたわよ、仕方ないじゃない。」
美紀は、役員達が確認する為に、もう一度動画を皆んなの前で見せた事は伏せておいた。
「それで、ショーツ姿を写真に撮られたり、ショーツも脱がされて全裸で謝罪をさせられたりしたの。でも、ご主人も興奮してたみたいよ。普通、あんなに問い詰められれば縮こまりそうなものだけど、立派になってたもん、アソコが。」
「ま、まぁ。」
「私も、曖昧にして変な噂になってマンション中に広まるより、はっきりさせておいた方がいいと思って。役員の奥さん達には、口外しないように釘は刺しておいたけど。由紀子さんにも言わないように言ってあるから。」
「ああ、でも、心の中では『あなたのご主人は変質者よ』って、私に対して優越感を持ってるんでしょうね。ちょっと癪だわ。」
「それでね、私も考えたの。今度の役員会で、由紀子さんのいる前で正体をバラしたらどうだろうって。そこで、由紀子さんは皆んなの前でご主人を罵倒して、もう由紀子さんに対しては頭の上がらない存在だという事をみんなに知らしめるのよ。そうすれば、由紀子さんだって肩身の狭い思いはしなくてもいいはずよ。それからは、由紀子さんがご主人を調教していくのよ。役員の奥様達もその仲間にしてしまえばいいのよ。私も、もちろんお手伝いするわよ。どうかしら。」
「え、ええ、いいわね。それで、どういう段取りにするの?」
「今度の役員会の日は、由紀子さんには、接待ゴルフだと言って家を出てきなさいってご主人に伝えるから、由紀子さんもそのように送り出してあげて。それでね……。」
美紀が、由紀子に当日の段取りを説明していく。
「わ、わかったわ。やってみる。」
「その前に、ちょっと夕方に映画を観ようって呼び出してるから。そこで、もう少し躾けておくからね。」
「わかったわ、どんな言い訳をして出ていくのかも楽しみだわ、多分、見えすいた言い訳でしょうけど、信じたフリをしておくわ。」
俊樹と美紀が、映画に行っている時も、美紀から様子を知らせるメールが入ってきていた。
「映画館で、こんな事するなんて。昔、二人で観に行った時も、本当はされたかったのかな。」
由紀子は、付き合ってた頃に俊樹と行った映画を思い出していた。
美紀から、映画館を出たという連絡が入った。
由紀子は、俊樹がどんな顔して戻ってくるのか、エレベーターの所で待っててやろうと思って家を出た。
すると、俊樹がエレベーターから降りてきた所だったが、何やらエレベーターの中に向かって話している。
「あら、あなた、帰ってたの。」
俊樹の背後から声をかけた。
何やら動揺していたようだったが、気にせずに、コンビニに行くと言ったら、一緒に行くというのでエレベーターで降りた。
エントランスで美紀と会い、俊樹には気付かれないようにアイコンタクトをした。
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次回から、Side Storyの前に戻ります。
由紀子の心情と共にお楽しみ頂ければと思っています。
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