美紀と俊樹は、映画館を出ると、
「一緒にいる所を見られたら困るわよね、ここで別れましょ、口に含んでる私のショーツは差し上げるわ、たっぷりと私の味を覚えておいてね。」
口が塞がっている俊樹は、黙って頷いた。
離れて行こうとしたが、思い出した様に振り返り、
「あっ、それからこれもあげる。」
俊樹に丸めた布切れを握らせた。
「じゃあね。由紀子さんによろしくね。」
美紀は、ウインクをして離れて行った。
美紀の姿が見えなくなると、手を開いて布切れが何なのか確かめてみる。
「こ、これは!」
黒いTバックのショーツ
「な、なんで。」
美紀が、穿いていたショーツは口の中に入っている、なのにどうしてもう一枚あるのか。広げてみるとクロッチ部分が白くなっている。周りを気にして素早くポケットに入れた。
駅へと向かう途中も、口に含んだショーツはそのままにした。美紀から言われた訳でもないのに。
帰りの電車の中でも、ポケットに手を入れてショーツの感覚を確かめながら、どうしてもう一枚?の疑問は拭えなかった。
マンションに戻りエントランスに入ると、エレベーターを待つ2人の女性の背中が見えた。
流石にショーツを咥えたままというわけにもいかないので、口から取り出しポケットにしまった。
女性達の背後に近付き、
「こんばんは。」
誰だかわからなかったが、夜なので同じ住人だと思い挨拶をした。
「あ、こんばんは。」
2人の女性が同時に振り返り挨拶を返す。
瞳と真由美だった。
真由美は、顔だけ少し振り向き気味で俯きがちだ。
「あら、真田さん、一人でお出かけ?」
瞳が、笑みを浮かべて聞いてきた。
「え、ええ、と、友達と映画に。」
瞳には嘘をつく必要はないと思ったが、真由美がいたので咄嗟に、友達と言ってしまった。
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