【真由美視点】
映画館の入り口で真由美が待っていると、瞳がやってきた。
「瞳さん、もう始まってるみたい。」
真由美が、開場時間と時計を見比べて言うと、
「大丈夫よ。最初は予告編だから、さあ、入りましょ。」
「え、ええ。」
瞳と真由美が場内に入ると、既に明かりは落とされ、暗くなっていた。
足元の灯りを頼りに席に辿り着くと、
「お客さん、少ないわね。」
瞳が言うと、
「え、ええ、そうね。」
暗くても、人がいるかどうかはわかるので、真由美も周りを見回して返事した。
真由美達の後ろには、カップルらしき2人がいるだけだった。
真由美は、特に流行りでもない映画に、なぜ瞳が誘ってきたのか不思議に思っていたが、久しぶりの映画なので、ゆっくり鑑賞するつもりで席に着いた。
本編が始まると、瞳が耳元で囁いてきた。
「服を脱いで。」
真由美は、耳を疑った。
「えっ、な、なんて。」
聞き返すと、もう一度、
「服を脱いで。」
同じ言葉が返ってきた。
聞き間違いではなかった。
「で、でも、こんなところで。」
「大丈夫よ、誰も振り向いたりしないわ。」
「う、後ろにもいたわ。」
真由美は、席に着く前に、カップルがいる事を確認していた。
「後ろからも、頭しか見えないわよ。立ち上がらなければ大丈夫よ。」
瞳は、後ろにいるのは美紀だと知っているので気にする素振りもない。
「ええ、そんな…。」
真由美の鼓動が速まってくる。
『ここは、映画館よ。こんなところで服を脱いだら…、誰かに気付かれたら…。』
そう思うと、身体が段々と熱くなってきた。
ブラウスのボタンに手を掛ける。
『ああ、脱ごうとしてるの?』
『だって、瞳さんが、脱げって言うんだもの。』
『人のせいにして、本当は脱ぎたいんでしょ。露出狂の血が騒ぐんでしょ。』
『違うわよ、ろ、露出狂なんかじゃないわ…。』
真由美の中で2人の真由美(理性と本能)が言い合っている。
葛藤をしながらも、指が動いていく。
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