美紀は、不審者(変質者)がトシだという事を役員達の間だけの秘密に留めておきたかった。前に見せた動画の事を、役員達が他の奥様達に話したかどうかは知らなかったが、それはまだ正体不明の事なので噂話で済んでしまうが、その正体がトシだという事を、マンション中に広まってしまうとまずい事になる。
由紀子の耳にも届いてしまうだろう。
下手に、このまま曖昧に済ませてしまうと、きっと誰かが広めてしまうだろうと思っていた。
「わ、わかったわ。もう一度、皆んなで見てみましょう。」
美紀は、スマホを持って、部屋の真ん中に出て来た。
役員達も、集まり美紀の周りを取り囲んだ。
真由美は、ショーツ1枚の格好で、行き場がなく、部屋の隅に残っている。
俊樹も、成り行きを見守るしかない。
「では、再生するわね。」
美紀が、動画をスタートさせる。
スマホの画面に役員達の視線が集中する。
動画のスタートからしばらくして、
「あ、ここ、止めて。」
舞原が、声を上げる。
スマホの画面が静止画になり、ショーツ姿の男の下半身が映し出されている。
それを見た役員達の視線が、今度は一斉に俊樹の下半身に向けられる。
何度か見比べて、
「ね、同じでしょ。」
舞原が、勝ち誇った様に言うと、
「そうね。」
「同じよね。」
「ほんと、一緒だ。」
役員達も認め合う。
「そうね、同じに見えるわね。」
美紀も、初めて気がついた様な口ぶりで、役員達に同調する。
美紀が、俊樹に近寄り、スマホを翳して、
「これは、真田さんなの?」
冷静な口調で、俊樹に問いかける。
こんな決定的な証拠を見せられたら、シラを切り通せるはずが無い。
ましてや、美紀は、本当の事を知ってて聞いてきているので、誤魔化し切る事なんて到底出来ないと観念し、
「は、はい、これは、私です。申し訳ありませんでした。」
俊樹は、皆んなの前で、不審者(変質者)が自分である事を認めてしまった。
美紀は、もし俊樹が認めなかったら、顔が写ってる動画を晒そうとも思っていたが、俊樹があっさりと認めたので、それは見せなかったが、
「皆さん、これは、大問題ですよ。このまま放っておく訳にはいきませんよ。野球拳は中止にして、今から、真田さんの裁判を行いたいと思いますが、どうでしょうか。」
「そうよね。やりましょ、裁判を。」
真っ先に、舞原が声を上げる。
「そうね。」
「やりましょ。」
「賛成!」
次々に、役員達の声が上がる。
「田村さんは、どう思うの。」
美紀が、ひとり離れている真由美に尋ねる。
「わ、私も、賛成です。」
真由美は、心の中では、
『ああ、真田さんの気持ち、よくわかるわ。私だって…。』
同情するも、皆んなに逆らう事は出来なかった。
「では、全員一致で、今から真田さんの裁判を行います。」
ここから、瞳が仕切りはじめた。
「田村さんは、服を着てもいいわよ。それともそのままの方がいいかしら。」
真由美に向かって、チクリと嫌味を言うと、
「い、いえ、そんな、着させてもらいます。」
真由美は顔を真っ赤にして、床に脱いでいたブラとワンピースを身に着けて皆んなの元に戻った。
瞳と美紀が、前の席に座り、向かい合って役員達が座った。
その間に挟まれ、俊樹が、ショーツ1枚の格好で立たされた。
「では、これより、真田さんの裁判を行います。」
瞳が、裁判の開始を宣言した。
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