「さあ、最後は真田さんと田村さんね。前に来て頂けますか。」
最後に残った2人を、瞳が呼び寄せる。
部屋の後ろの方にいた俊樹と真由美が、お互いの顔を見た後、前の方に出て行く。
対戦の終わった役員達は、今までの対戦内容から、
「男性の真田さんが有利よね。」
くらいにしか思ってなく、感心も薄れていた。
「残った対戦は、こちらになります。」
瞳が、封筒を翳し中の紙を抜き取り読み上げる。
「野球拳です。」
「えっ!」
食事とお酒に気持ちが移っていた役員達が、一斉に驚いて食事の手を止める。
舞原「野球拳ですって。」
米倉「え、ええ、そう言ったわよね。」
小池「野球拳って、じゃんけんで負けたら服を脱ぐやつよね。」
伊野「私達でなくてよかったわ。」
他人事だと思うと感心が出て来て、前にいる二人に注目が集まる。
俊樹と真由美は、対戦内容を聞いても、驚いた様子は無く、お互いの表情を見て、
『やっぱり知ってたんだ。』
『ご存知だったのね。』
と心の中で思った。
「まあ、お遊びなので、これ以上無理って言う時はギブアップして頂いて結構ですよ。ただ、この対戦の賞金は3万円となっています。」
会長の美紀が口を挟むと、
「えっ~、私達、5千円だったのに。」
賞金をもらった小池が、不満そうに言うと、
「じゃあ、小池さん、田村さんとお変わりになりますか?」
と美紀に言われて、小池は黙り込んでしまった。
「田村さんも、嫌って言えばいいのにね。」
「そうよね、恥ずかしくてないのかしら。」
役員達が、ヒソヒソと話している。
「賞金に目が眩んだのかしら。」
「ご自慢のスタイルを見て欲しいんじゃないの、今日だって、あんなにピッタリした服着ちゃってるし。」
真由美の年齢を感じさせない美貌をやっかむ者もいる。
少し緊張した雰囲気の中、
「では、始めますね。や~きゅ~う~、す~るなら~、こ~いうぐあいにしやしゃんせ~、アウト、セーフ、よよいのよい!」
瞳が身振りを加えながら掛け声をかける。
俊樹は、瞳が掛け声を掛けてる途中に美紀の顔を横目で見た。
『右目を閉じたな、パーか』
と心の中で呟く。
真由美も、瞳の身振りの中に合図があり、
『チョキね』
と心の中で呟く。
二人への合図は、美紀と瞳の間で打ち合わされたものだった。
「あ~っ、田村さんの勝ち~」
「では、真田さん、何を脱ぎますか?」
瞳が、結果をみんなに知らせながら、俊樹に聞くと、
「く、靴下を。」
俊樹は、『やっぱり、負けたな』と思いながら靴下を脱いでいく。
真由美は、『勝っちゃった、どうして』てっきり、自分が負けるものだと思っていたので、勝った事を喜ぶのを忘れ、ただ俊樹が靴下を脱ぐのを眺めていた。
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