「もしもし、アキちゃん?久しぶりだねぇ」
男が電話に出た。
ねっとりした口調が耳に響く。
「滝さんお久しぶりです。実はお話したいことがあるのですが・・・・・・」
「んー、急用かい?」
どうやら滝は忙しいらしい。
経営者なのだから当たり前と言えば当たり前だ。
ただ、こちらとしてはどうしても
今日中にコンタクトが取りたい。
「はい、できれば今日中にお願いしたいです。」
「そっかぁ、まぁマキちゃんの頼みなら仕方ないか。今日の18時、空けておくよ」
「ありがとうございます、それではまた掛け直します」
「あ、ちょっと待ってくれる。久しぶりに顔も見たいしzoomにしよう。LINEにURL送っとくから、またね」
そう言うと滝は一方的に電話を切った。
この男相手だとどうもペースを掴めない。
モヤモヤした気持ちを抱えながら家路についた。
午後18時、約束の時間が来た。
私はパソコンをリビングのテーブルに置くと、
収納付きの2人掛けソファに腰をかけ、
zoomを開いた。
どうやら滝は先にログインしていたようで、
z画面には、滝と書かれた
ブロック体の白文字がデカデカと浮かんでいる。
「こんばんは」
「待ったよアキちゃん」
あいさつをすると、すぐに滝が反応した。
イヤホン越しに滝のねっとりした声が響く。
「お待たせしてすみません、お忙しいのに」
「大丈夫だよ、わざわざ50半ばのおじさんに電話してくれてありがとう。カメラONにできる?」
滝に言われ、カメラのアイコンをクリックした。
画面上の小ウィンドウに自分の姿が写る。
「おー、似合うねぇ紺のワンピ。あと、先週の放送の時より髪のトーン暗くしたでしょ?」
「えぇ、まぁ」
そこに気づくのかと思った。
思えば、滝は人の小さな変化によく気づく男だった。
「で、話したいことってなに?」
「こちらです」
滝に局から持ち出していた週刊誌の記事を見せる。
「あなたが文秋に売ったんですか?」
「違うよ、見つけたんじゃない?」
滝はとぼけたように言った。
「大学卒業の時に、私の記事はブログからすべて消すと約束したはずです」
「そうだねぇ。けど、再投稿はダメとは言われてないし、それにねぇ・・・・・・」
意味深長な言葉の後、
突然、zoomに動画が流された。
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