「自分がどんな人間か思い出した?」
滝が嘲るように言った。
滝の言葉に呼応するように、
見て見ぬふりをしてきた私が、
心の奥底に抑えつけていたもう一人の私が「放せ放せ」と暴れだす。
抑えつけるのに必死で滝に言葉を返せない。
「思い出せないなら教えてあげようか?ナルシストでエゴイストのマキちゃん。
あ、言っちゃた」
関がおどけながら言った。
心では悔しいのに脳と身体が悦んでしまっている。
その隙にもう一人の私が抑えから逃げ出した。
自由になったもう一人の私は、
まだギリギリ機能している私の心を破壊し始めた。
「あれ?返事がないなぁ。あ、言い方が違ったんだね」
滝が少し間を取る。
そして言う。
「自意識過剰で破壊欲求持ちの傲慢変態クズ女、返事をしろ」
滝の冷たく高圧的な声が体中に、下卑た言葉が脳内に響く。
望んでいないのに甘い痺れが広がっていく。
もう限界だ。
もう壊れる、壊される。
「・・・めてください」
「は?」
「もうやめてください。お願いします」
私は声を振り絞って言った。
「ならお願いの仕方があるよな?変態には変態なりのさぁ、覚えてるよなぁ?」
滝がまるで借金を取り立てるような口調で言った。
滝の口調に恐怖心が募っても、
すぐに快感に変換されて稲妻のように全身に飛び交う。
もう一人の私はその稲妻をひっ捕まえて、槍のようにグサグサと私の心に突きさす。
それすら気持ちいい。
滝のお願いの意味は分かっている。
お願いすれば私は終わる。
なのに身体が勝手にワンピースのファスナーを下ろしていく。
どうやら脳と身体は、完全に私の制御下から外れたらしい。
そう思った直後、心がパリンと割れる音がした。
※元投稿はこちら >>