「奈津子と言います。
全くこのような事は初めてなので、どうぞよろしくお願いいたします。」
相手の奥さんも、私と同じなのでしょう。
緊張して上ずった声で私に挨拶してくれました。
「小百合です。
奥さん、私だって初めてなんです..。」
「まあ..」
お互いに、相手の奥さんも未経験だと分かって少し安心しましたが、それでもまだ自分達が相手の旦那さんに裸を観賞されるとは、信じられませんでした。
いえ反対に、裸を見られるだけで済まないのではないか..、と言うもっと恐ろしい考えも浮かびます。
その後、近くの海鮮料理店で昼食となったのですが、新鮮な海産物のご馳走を美味しそうに平らげていく夫とあちらの旦那さんに比べて、私と奥さんは顔を青くして、殆ど食事が喉を通りませんでした。
見晴らしの良い岬等の見物もしましたが、男性二人は
「良い景色ですな。」
「妻達を裸にして、ここをバックに写真を撮りたいですね。」
「私も、同じ事を考えていましたよ。」
等、私達女にとっては、とても恐ろしい事を楽しげに話していました。
そして午後4時。
予約していた旅館のチェックインの時間となったのです。
カウンターで受付をする夫達の後に隠れるように、私達女はうつ向いて立っていました。
本当に、今からでも逃げ出したい..。
そう思いました。
「こちら、離れのご予約でございますね。」
泊まるのは、本館の中ではなくて、別棟の離れなんです。
恐さや恥ずかしいさ痛さに耐えきれず、私達が声を出しても、他の人には聞こえない。
これは、本当に..。
恐い、恐いわ..。
隣に立っている奈津子さんも、身体が小刻みに震えていました。
「ご案内いたします。」
旅館の方が、先に立って歩き出しました。
私達女は、足が動かず立ちすくんでしまいましたが、夫達から背中を押され、重い足取りで旅館の方の後について行きました。
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