由紀子は、俊樹の見回りがいつものように遅くなると思って、先に眠ることにした。ベランダのドアの鍵を確認した時、裏通りに人影の様なものが見えた。
由紀子の家のベランダからは、地下駐車場に入る道路が見下ろせる。
「あら!」
気になって、ベランダに出てみた。
「はっ、も、もしかして、あれは。」
自販機に向かって立っているパンティ1枚の男に気がつく。
「あ、あれが、美紀さんの言ってた変質者だわ。」
由紀子からは、男の顔は確認出来なかった。
「そうだ、俊樹さんに知らせよう。」
慌てて部屋に入り、スマホを持ってもう一度ベランダに戻ってくる。
見失わない様に、その男から目を離さない様にして、俊樹に電話を入れる。
ツーツーツー
「話し中だわ、どうしよう。そうだわ、美紀さんも一緒だろうから、美紀さんにかけてみよう。」
トゥルルー、トゥルルー
「美紀さん、出て。」
そう思ってると、美紀が電話に出た。
もちろん、由紀子の位置からは美紀達の姿は見えない。
美紀「もしもし。」
由紀子「もしもし、美紀さん。」
美紀「えっ、あ、由紀子さん。どうしたの突然。」
由紀子「ごめんなさい、今、主人と見回り中よね。」
美紀「えっ、ええ。」
由紀子「主人が話し中なので、美紀さんなら繋がるかなって思って。」
美紀は、自販機の前にいるトシを見ながら
美紀「あ、ご主人、会社の人から電話がかかって来たみたいで。何か急用?」
由紀子「そうなの、こんな時にもう。」
少しイラついてくる。
美紀「急用なら伝えるけど。」
由紀子「今、どこを見回ってるの?」
美紀「えっ、あ、お、屋上よ。」
咄嗟だが、なぜか嘘を言ってしまう。こんな時は本当の事では無い方が良い様な気がして。
由紀子「屋上なら、離れてるわね、いるのよ、今、裏の通りに、変質者が。」
美紀は、状況が直ぐには掴めなかった。
美紀「由紀子さん、どこにいるの?」
由紀子「うちのベランダから、見えるのよ。裏の通りが、戸締りしようと思ってたら人影が見えたのでベランダに出て見たの。裏の通りの自販機、知ってるでしょ。いるのよ、その前に。パンティ1枚の変質者が。」
美紀は、ようやく事態が飲み込めた。
『見てるんだわ、上から』
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