「じゃあ、裏に行きましょ。」
美紀が先に立って裏口へと向かう。
マンションの裏には、地下駐車場に入る道路が幹線道路から分かれて繋がっており、その幹線道路を渡ると公園に行くことが出来る。
マンションの裏口を出た所で、
「私達は、ここにいるから、トシはあの自動販売機まで行って、飲み物を買って頂戴。」
幹線道路に行く途中に、自動販売機が設置されている。道路は街灯はあるが、薄暗く、自動販売機の灯りが煌々と輝いている。
「えっ、ひ、一人で、あそこまで、ですか?」
「もし、車が入ってきたら、これで教えてあげるから、自販機の陰にでも隠れなさい。それとこれも着けておきなさい。」
そう言って、先程取りに戻ったトシのスマホとマスクを渡した。
「瞳さんが、見張ってて、教えてくれるから。瞳さん、トシに電話して。」
「え、ええ、トシ、番号教えて。」
「聞こえる?」
瞳が、トシから聞いた番号に電話すると、
「は、はい。聞こえます。」
美紀から、自分のスマホを受け取って確認する。
「じゃあ、これで、飲み物買って。」
美紀は、10円玉ばかり20枚、トシに渡した。
「あ、あの、100円玉は…。これだと時間が。」
少しでも早く、買って戻って来たいトシは、10円玉ばかり渡されて戸惑ってしまう。
「ごめんね。今、これしか無くて。それと、何でもいいから買って直ぐに戻って来てもいいとは言ってないわよ。どんな飲み物があるか、瞳さんに報告して、瞳さんが指示した飲み物を買うのよ。」
「あ、そ、そうなんですね。」
自販機の前にいる時間が長引きそうだと思いながらも、返事をするしかなかった。
「飲み物を買った後はね…。」
まだあるのか、と思いつつ、美紀の言葉が続く、
「それを、その場で飲み干して、自販機の横に建ってる電柱におしっこして帰って来なさい。いいわね。」
「えっ、お、おしっこまでするんですか。」
「そうよ、今日はまだしてなかったでしょ。マーキングよマーキング。ちゃんと犬らしく、四つん這いで片足上げるのよ。さあ、わかったら、行きなさい。」
「ああ、わ、わかりました。」
反抗する事など許されないと承知しているので、スマホを片手に、灯りが眩しい自販機に向かって進み出した。
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