「随分とゆっくりだったわね。」
食卓で待ちくたびれた様に由紀子が言った。
「う、うん、ちょっと考え事してたから。」
「頑張ってくれるのは感謝してるけど、体には気を付けてね。温め直すわね。」
由紀子が、テーブルの上の料理を持ってキッチンへ向かう。
「ありがとう、こちらこそいつも感謝してるよ。」
食卓に着くと、温め直された料理が並べられた。
「あなた、今夜も見回りに行くの?」
心配そうに由紀子が聞いてきた。
「う、うん。昨日はいなかったけど、土曜の夜が一番出そうだって澤村さんも言ってたから。」
「疲れてるんだし、今日くらい勘弁して貰えばいいのに。私から美紀さんに言ってあげようか?」
「い、いや、いいんだ。澤村さんだってマンションのみんなの為に頑張ってるし、それに、お風呂に入って疲れもとれたよ。」
「そおお、それならいいけど。早く不審者の正体がわかるといいわね。」
「そ、そうだね。どんな奴なんだろうね。」
「きっと、女に相手にされないオタクっぽい人よ。」
「そ、そうかもな。」
自分の事を否定されている様な気持ちになって居た堪れなかった。
食事を終えて時間が過ぎるのを待った。
美紀との約束の時間になると、
「じゃあ、行ってくるね。先に寝ててもいいからね。」
「うん、気を付けてね。」
何が起きるのか、不安と期待を抱いて玄関のドアを開けた。
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