「昨日は遅く迄ご苦労さん。」
朝起きてくると、由紀子は朝食の用意をしていた。
「あ、ああ。」
少し気まずそうに返事すると、
「ごめんなさいね。先に寝ちゃってて。」
申し訳なさそうに由紀子が言った。
「い、いや、いいんだよ。俺も帰ってきて直ぐに寝たから。」
本当は、興奮してなかなか眠れなかった。美紀のおしっこの感触が頭から離れなかった。
「それで、どうだった?」
「えっ、あ、何、どうだったって。」
また思い出していたので、頭がぼぅっとしていた。
「いやね。見回りよ、見回り。不審者はいたの。」
「あ、見回りね。いないよ、いない。不審者なんて。そんなに都合よく見つからないよ。」
「そうね、でも、美紀さんも熱心だから、その内見つかるわよ。誰なのかしらね、マンションの住人だったら嫌だわ。」
「そ、そうだね。」
食事が喉を通っても、味が感じられなかった。
午前中は、由紀子から実家の愚痴とかも聞きながらも穏やかに過ぎていった。
お昼に差し掛かろうかという時に、美紀からメールが来た。
“大変よ、大変。昨日の事、黒川さんの奥さんに見られてたの。”
「えっ!」
メールの文面を見て、思わず声を上げてしまった。
「どうしたの?」
あまりの声の大きさに、由紀子が心配そうにこちらを見ている。
「あ、いや、なんでも無いよ。ちょっと、トイレ。」
由紀子の側でメールを見るわけにもいかず、トイレに篭って続きを見た。
“黒川さんの玄関の前で、何かしてたでしょ。あれ、覗き窓から見てたんだって。”
「そ、そんな。どうしよう。」
ちょっと大胆になって、腰を突き出したり、ショーツからちんぽを出したりした(美紀には見えていなかった)事を後悔した。
“今日の午後、私の所に黒川さんが来るから、私から連絡したら貴方も来て。”
「えっ、そんな。」
もう、頭の中が真っ白になっている。
続けて読んでいく。
“それから、見られていたのは貴方だけだから、私は第三者よ、いいわね。黒川さんには、自分一人でやったって言うのよ。“
「まさか!」
少なくとも美紀と共に謝るんだという思いが儚く消えた。
さらに、
”この際だから、自分はどうしようもない変態だって事を打ち明けちゃいなさい。黒川さんの前で、態度で示すのよ。昨日の私のショーツも履いて来てね。じゃあ、また後で。”
読み終えると、しばらくトイレから動けなかった。
でも、なんとしても、黒川さんで止めておかなければならないという思いが、美紀の指示に従う決心をさせた。
ようやくトイレから出てきた俊樹の顔色が悪かったので、由紀子も心配して、声をかけて来た。
「どうかしたの、もしかして誰か亡くなった?」
周りから見るとそんな風に写ったみたいだ。
「い、いや、そうじゃないんだ。ちょっと、仕事の事でね、失敗しちゃって、午後に呼び出しが有るかもしてないから。」
とりあえず、口実をつけておく。
「そうなの、まあ、誰にでも失敗はあるわ、元気出して頑張ってね。」
「あ、ありがとう。」
由紀子の励ましに、心苦しい思いで一杯になった。
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