黒川瞳は、いつものように夫の帰りを待っていた。夫は典型的な仕事人間でいつも疲れて帰ってくるので夜の生活もご無沙汰気味だった。
でも、専業主婦でいれるのも夫のお陰だと思って、夫には不満を言った事はない。
息子も独立して一人暮らしをしているので、自由な時間は沢山あった。
夫の食事の用意をしながら時計を見ると10時30分、
「もう、そろそろ帰ってくる時間ね。エレベーターまで迎えに行ってあげようかな。」
そう思いながら、玄関まで行き、何気に覗き窓に目をやると、
「えっ、なに、なんなの!」
玄関の前で、ショーツ1枚の男が、こちらに向かって腰を突き出している。
「も、もしかして、これが、あの不審者?」
急に鼓動が早まってきた。
当然、向こうはこちらから覗いてるなんて気付いていない。鍵も掛かってるし家の中からなら怖くないと思うと、しっかりと見てやろうという気持ちになる。
「まあ、大きい!」
ショーツの上からでも男がボッキしているのははっきりとわかった。
それまで下を向いていた男が、一瞬顔を上げてこちらを見た。目線が合ったと思ってハッとして覗き窓から目をそらす。
ドキドキ、ドキドキ
「向こうからはわかるはずないわ。」
もう一度覗き窓に目をつける。
今度は、はっきりと顔を見る事が出来た。
「あら、真田さんのご主人?」
普段、エレベーターで挨拶する程度だが顔はよく知っている。その顔と目の前にいる不審者の顔が一致するのに少し時間を要したが、
「ま、間違いないわ。真田さんだわ。」
不審者の正体がわかると、今までの恐怖心から好奇心に変わっていった。
「真田さんのご主人にこんな趣味があったなんて。」
覗き窓に目が釘付けになり、無意識に手は股間に導かれていた。
だが、玄関を開ける勇気はなかった。
しばらくすると、男は四つん這いになって覗き窓から消えていった。
恐る恐る、そっと玄関を開けて廊下に半分顔を出して見ると、四つん這いの男は非常階段に入って行った。
スカートの中に手を入れると、そこはしっとりと湿りを帯びていた。
「澤村さんに教えなくっちゃ。」
非常階段に美紀がいる事なんて、思ってもいなかった。
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