週末までは比較的穏やかに過ぎていった。トイレの時に、美紀にメールで許可をもらうという事は守っていたが、少し拍子抜けの感じもしていた。
日常生活に於いては何よりの事なのだが。
金曜の朝、朝食の時に、由紀子が、
「今日の午後にね、臨時の自治会の集会があるのよね。昨日、美紀さんから連絡があって。」
食事をする手が一瞬止まって、
「え、あ、そうなの。」
少し言葉に詰まりながら、動揺を悟られない様に、由紀子の話に耳を傾ける。
「ほら、この前言ってたでしょ、不審者が出るって話し。どうやら、その事みたいなのよね。このマンションの奥様達って専業主婦が多いでしょ。旦那達の仕事中の方がいいからって。」
由紀子は、暇潰しくらいの感覚で話している。
食事をしながら、片手間で聞いてるふりをしているが、体が熱くなり鼓動も早まってきたのがわかる。
食事を終え、少しでも早くこの場を去りたかった。
「そ、そうか。帰ってきたら、どんな話だったか聞かせて。」
そう言うと、仕事に出掛けていった。
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(自治会の集会にて)
20人程の主婦達が集会場に集まっている。
美紀「皆さん、お忙しいところ、お集まり頂き、ありがとうございます。今日お集まり頂いたのは、匿名である動画が送られてきまして、その動画を皆さんにも見て頂きたいと思いまして。」
主婦A「どんな動画かしら?」
興味深そうに、今から映そうとしているモニターに注目している。
美紀「これなのよ。」
モニターに動画が映し出される。
マンションの屋上で、男がパンティ1枚の姿で四つん這いになっている。
主婦B「まあ!」
主婦C「なんなのこれは。」
場内がざわつく。
主婦A「やだ!あれ女性ものよね。」
由紀子『あのショーツ?どこかで…。』
先日、美紀に見せてもらった時には、気が付かなかったが、あらためて冷静にみると気になる事があった。
主婦B「もう少しで顔が分かりそうだけどね。」
田村真由美「このマンションの住人なの?」
美紀「それが、顔が写って無いので、正体はわからないんです。」
みんな、モニターを食い入る様に見つめている。
男は、片足を上げておしっこし始める。
黒川瞳「あっ!」
『やっぱり、あのおしっこも、この人だったんだわ』
ゴミ出しの時の水溜りが頭に浮かぶ。
真由美「嫌だわ、屋上でおしっこなんて。」
そこで動画が終わる。
美紀「残念ながら、これだけなのよ。匿名で送られてきたんだけど、これって本人が送ってきたと思う?」
瞳「でも、これって撮影してる人がいるわよね。」
真由美「そんな変質者が、このマンションに住んでるって事?」
美紀「こんな噂が外に広がったら困るでしょ。だから、皆さん、この事はここだけの話にして欲しいの。私の方で探ってみるから。」
主婦B「そうよね。こんな噂が広がったら、マンションの住人みんなが白い目で見られるわよ。黙ってましょ。何か見かけたら澤村さんに連絡する様にしましょ。」
美紀「私も、夜の見回りを増やそうと思ってるので、ご協力お願いします。皆さん、今日は、お忙しい中、すみませんでした。
みんなが帰っていく中、由紀子が美紀に近寄り、
「夜の見回りだけどね、男手が必要だったら主人にも手伝ってもらうから、遠慮なく言ってね。」
「ええ、ありがとう、助かるわ。」
『もちろんよ。』
心の中で微笑みながら、美紀は、由紀子にお礼を言った。
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