ピンポ~ン
由紀子は、お昼前に実家から帰ってきて昼食の用意をしようと思ってたいた所だった。
「は~い、ちょっとお待ちください。」
玄関を開けると、美紀が鍋を抱えて立っていた。
「あら、美紀さん、どうしたの?」
今日、実家から帰って来る事は言っていなかったので、少し不思議に思ったが、
「いえね、音がしたから、由紀子さん帰ってるのかなって思って。よかったらランチご一緒にどうかなって思って。昨日の残りで申し訳ないんだけど。うちの旦那、単身赴任でしょ、一人だと余っちゃうのよね。」
美紀が鍋を掲げてニコッと笑う。
「え、ええ、じゃ、じゃあ、お上がりになって。ちょうどお昼の用意をしようと思ってた所だったの。今朝実家から帰ってきてちょっと疲れてたから助かるわ。」
本当は、簡単に済ませて少し休みたかったが、鍋を持ってきた美紀を追い返すことも出来ずに、家に上げた。
リビングに通されると、美紀が、
「ご主人は、会社?」
と聞いてきたので、
「ええ、私が帰ってきた時にはもう出かけてたわ。」
由紀子は、何の疑いも無く返事をした。
「あっ、私がいない間、何かご迷惑かけたりしましたか?」
普段はあまり気にしてる感じではない旦那の事を聞かれたので、ひょっとしたらという申し訳なさそうに聞いてみた。
「そんな事はないですよ。お互い一人だったので、私の相談を聞いてもらったりして、助かったわ。」
美紀の少し匂わせぶりな話し方に違和感を感じたが、
「そ、そうなの、あの人が相談にね。」
深く追求しようとはせずに、聞き流そうとすると、
「それに、夜の見回りも手伝って頂いて、いつもは女一人でしょ、とても心強かったわ。由紀子さんからも、私がお礼を言ってったってご主人に言っておいてね。」
笑顔で話す美紀の顔には悪びれた所は感じられずに、素直に感謝してるのだと思った。
「美紀さんも、ご主人が単身赴任だから大変よね。男手が必要っだったら何でも言ってね。うちの旦那に手伝ってもらうから。」
由紀子も、もし自分が一人だったらと思うと美紀の気持ちに同情していた。
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