お屋敷に来て、はるは奴隷としての成長が著しかった。
身体こそ小さく、身体的美しさでは完璧には程遠かったが、記憶力や臨機応変の才能、我慢強さ、そして何より愚直に「自分は人間では無く、殿様の所有物」と言う覚悟を忘れなかった。
殿様の前で些細な失敗をして、鞭打たれる時も、言い訳など考えなかった。
むしろ、「殿様が私を罰してくださる..」と恍惚感に浸ってしまい、明らかに他の奴隷の失敗を自分で引き受けてしまうことさえあった。
ドライとフィンフは、それを心配した。
殿様のお怒りによる罰は、時として奴隷の生命を無くすることある。
ドライとフィンフは、はるが惜しかった。
自分達が、いつまでも殿様のお世話が出来るわけではない。
自分達でさえ、思わぬ失敗で殿様のお怒りを受け、生きたまま皮を剥がれたり、解剖されると言う刑罰で命を失うか分からない。
その時に、自分達の跡を継いで、殿様にお仕えしてくれる子が欲しい。
しかし、殿様にお仕えできる素質のある奴隷は少なく、さらに生き残ることはもっと難しかった。
はるが殿様のお気持ちで命を失うのなら仕方ない。
しかし、他のつまらない奴隷のために命失わないかと二人は心配したのだった。
いつの間にか、二人ははるに、妹か娘のようなイメージを持つようになっていた。
はるが、お屋敷でドライとフィンフの手伝いをするまでになるのに、1年掛かった。
はるの優れた頭脳と懸命な努力の賜物だった。
気に入ったペットであるはるを手に入れて、殿様も以前程残虐な遊びはしなくなっていた。
しかし、平穏は続かなかった。
はる達の住む国である帝国は、西方から勢力を伸ばしてきた連邦と勢力争いを続けてきた。
連邦には多くの民族がいる。
中にはドライとフィンフの乳房の料理を食べたファンという名前の客人のように、食人文化を持つ民族までいる。
連邦が二つの国の緩衝地域を占領し、ついに両国は直接国境を接することになり、皇帝は殿様をこの方面の政治、軍事の両面の最高司令に任じた。
殿様は帝国高官の慣例に従い、自分の身の回りの世話をさせるために、ドライ達奴隷を10人、戦場に同行した。
帝国は、自らの強さを誇り、弱い者を従わせるという文化が根強い。
そのため軍隊も強く、特に貴族階級が主力の重装騎兵は、これまで戦って破らなかった敵はいなかった。
歩兵やまだ技術的に発展途中の砲兵は、主に平民から構成され、守備や重装騎兵のバックアップ程度の役割だった。
殿様は元々短期決戦を考えていたが、偵察の軽騎兵から敵の主力部隊の位置が報告されると、主力の重装騎兵のみを急行させた。
さらに重装騎兵が撃ち破った残敵を掃討するために、歩兵部隊も後を追わせた。
「敵を舐めすぎている」と言う幕僚の意見もあったが、まさにその通りだった。
殿様を含めた司令部は、迂回してきた敵の軽騎兵から包囲された。
そして12日目、殿様が指揮する司令部の食料は尽きた。
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