ただし、はるの乳首を供せられたのは、主賓のルーマーだけだ。
はるのリングを付けられた方の乳首は、リングが付いたまま殿様の御膳に出された。
「はる、このリングは返してもらうことになるか?」
殿様がフォークの先に刺した乳首を、調理台の上のはるに見せると、それまで無表情だったはるが、にっこりと微笑んだ。
殿様は乳首の皮膚を切り裂いてリングをはずすと、残った乳首を口に運んだ。
しばらく噛んだ後、飲み下したが、
「これは良い!焼き加減も淡白な味付けも最高じゃ!」
と、料理したドライを誉めた。
「良かった...。」
乳首を切り取られたはるが、一番ほっとした表情をした。
殿様の向かいに座っているルーマーは、やっと昔上司のファンが話してくれた人肉料理、それも生きた若い女性から切り取られた肉を調理したものが、本当にあるのを理解した。
殿様との会見の時は、
「食べてみたいですな。」
と軽口を叩いたが、実際前にして口に運ぶには勇気が要った。
やはり食べるのを断ろうか?
躊躇していると、隣の席に座るマレンがルーマーに小声で言った。
「貴方が招待をお受けしたのです。
食べないと招待したホストに失礼ですし、なにより自分の肉体を捧げたあの少女が報われません。」
豪快で太っ腹の筈のルーマーも、もうこの場の雰囲気に負けてしまい、目下のマレンの言うことがもっともだと思えてしまった。
殿様の食べ方の真似をして、焼かれたはるの乳首をフォークで突き刺し、口に運んだ。
ルーマーも人肉こそは食べたことは無いが、戦場や他国の接待で、様々な種類の料理を食している。
はるの乳首を口に入れた途端、柑橘系の香りだろうか、爽やかな風味が口に広がり、噛み締めると僅かにコリコリとした肉の感触と良く合った。
いかにも、可憐な少女の命の一部を食してる、と言う気持ちになれた。
しかし、いざ飲み込もうとすると、途端に、人間としての良心の限界と言うか、食道に送り込むのに、強い抵抗を覚えた。
はっ、と気がつくと、食材として乳首を切り取られた、昨日使いとして陣営に一人で来た少女が、縛られた調理台の上から顔を回して、自分の方をじっと見ている。
その表情は、恨みや怒りなどでは全く無く、純粋に
「私の肉はお気に召しただろうか..?」
との心配しか見て取れなかった。
ルーマーは口の中の肉、つい数分前までそこにいる少女の肉体に着いていた乳首を、胃の方に飲み込んだ。
美味い!
正直、ルーマーはそう感じた。
これはファン様等が癖になるはずだわい。
顔に満足げな微笑みが広がった。
もう一度、調理台の少女の方を見ると、
「ああ、良かった..」
と言うような、本当に天使のような微笑みを浮かべている。
後の半分も食べてしまおう。
そう思ってフォークを持ち直した時、ふと横にいるマレンの視線に気がついた。
そちらを向くと、あの何時も冷静で、どんな時にも厳しく自分を律している次席幕僚が、なんと顔を真っ赤に紅潮させ、ルーマーの前の皿を見つめている。
その表情は、子供が正直に
「それが食べたい!」
と言う時の表情、そのものだった。
「さすが、素晴らしい味ですな。
私一人で味わうには、もったいない。
こちらの、私の部下にも食させてよろしいかな?」
ルーマーが聞くと、殿様は満足げに頷いた。
ドライがルーマーの前の皿を、マレンの前に移した。
マレンは上司と殿様に黙礼すると、皿に残ったはるの乳首の半分をフォークで口に運んだ。
「これが..、天使の味...。」
あの生真面目なマレンが、まるで小娘が初めて恋愛したような蕩けそうな表情になっている。
いや、無理もない。
彼女も愛する父上のために、自分の乳房や膣を敵兵に捧げた経験があるのだ。
はるは自分の乳首が切り取られるのに、全く恐怖は無かった。
これまで苦痛は何度も経験している。
それに今日は、殿様のお為に身体を捧げる最高のイベントの中心になれるのだ。
ドライの持つ刃物が、乳首を切断していく時、痛みは確かに感じた。
刃物の切れ味が良かったので、無意味な苦痛は無かった。
これが、他人から切断されるのなら、身体を欠損される苦痛と悔しさに気が狂いそうになる筈だ。
しかし、はるは痛みを感じながらも、恍惚となっていた。
続いて二皿目は、乳房全体を切り取って、調理される。
先の尖った刃物が、薄いはるの乳房の下縁から刺し込まれた。
肋骨の並びに沿って、右の乳房から切り取られた。
切り取られた後は、肉と血の赤に混ざって、白い肋骨も所々で見えている。
さすがに出血も多くなった。
ドライがはるの右の乳房を完全に切り離すと、直ぐにフィンフが焼けた鉄の板で、身体の方の切断面を焼いて止血した。
切り取られる時は、殆ど動かなかったはるだが、焼きごてを当てられた時に、上半身をビクンっと痙攣させた。
フィンフが小さな声で話しかける。
「はる、苦しいじゃろうな..。」
「いえ、フィンフ様。
苦しくはございません。
でも、フィンフ様のおっしゃる通り、今、体が勝手に動きました。」
「そなたのせいでは無い。
誰でも神経に触れられると、こうなるのじゃ。」
「手足を拘束しておいてくださって、本当にありがとうございます。」
切り取られたはるの右の乳房は、表面の真っ白な皮膚を剥がれ、中の薄い脂肪の層を薄切りにされ、蒸気で蒸され、それが剥がされた皮膚の上に乗せられ、酢味噌系のタレを浸けて食すると言う料理だ。
これも、素晴らしい蒸し加減と味付けで、ルーマーもマレンも満足して食した。
三皿目は、左の乳房が切断され、同じく皮膚を剥かれ、炭火の上の格子で焼かれて余分な脂肪を落とし、残った香ばしくなった肉を食するものだった。
左の乳房が切り取られた痕を焼きごてで焼いて止血してくれるフィンフにはるが、微笑みながら、
「これで、胸だけは..、ドライ様、フィンフ様を越えることが出来ました..。」
と小声で言った。
滅多に聞かれないはるの、ジャークだった。
フィンフはもう叱らなかった。
いや、かえって
「確かにそうじゃ..。」
と相槌を打つと、少し淋しそうな笑いを浮かべた。
はるの両方の乳房が食べられると、ワインが出て食事は小休止となる。
「ルーマー殿、如何かな?
我が奴隷の肉と料理は?」
「いや、素晴らしい。
食材も料理の仕方も!
これが美食の極みかもしれませんな。」
ルーマーがそう誉めると、殿様は満足げに微笑み、ドライに
「そちの料理が誉めてもらえたぞ。
礼を言うが良い。」
と促した。
ドライはルーマーとマレンに向かい、深々と頭を下げると、
「奴隷の拙い料理を誉めていただきまして、ありがとうございます。
これも、私の手柄ではなく、殿様の御慈悲で今まで生きてきた、食材の少女のお陰でございます。」
と礼を述べた。
これを聞いた殿様も、
「おう、そうであった。
はる、お前の肉は美味いそうじゃ。
お前からも礼を言うが良い。」
と言った。
はるは拘束されている調理台からだが、声を上げた。
「本当に、私のような惨めで下賤な者の肉を食して下さいまして、本当にありがたいことでございます。
生きた私から切り取られた、新鮮さだけが取り柄の食肉ですが、どうぞお召し上がりください。」
乳房を切り取られた時、ドライは十分注意をしたのだが、やはり胸筋の一部が削り取られており、その関係で呼吸の為に肋骨を膨らませる力が衰えている。
いつもの遠くまで響くように伝わり、聞き取り易いはるの声では無くなっていた。
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