克介は女を何度も犯した。
尻にもつべにも、交互に挿入し、激しく身体を女にうち当てた。
何度射精したのかも分からない。
女は「ああっ!ああっ!」と悲鳴をあげるかと思えば、ぐったりと気を失ったようになり、そうかと思えば、自分の身体から抜かれた克介の一物を愛しそうに手で持ちながら、口に含んだりを繰り返した。
「今夜、この嵐の中の一夜限りだ。
思う存分、この女をいたぶりつくそう。」
親切にしてくれた、女の夫である男の顔が脳裏に過ったが、彼から奥さんを奪ったと言う事については、人妻を寝取ったと言う罪悪感より、自分の欲する女を奪い取ったと言う満足感、いつも自分がやりたいと思っていた極上のM女を責め抜いたと言う達成感の方が遥かに強かった。
女を犯しながら
「奥さん、奥さんが僕からこんなに責められているのを、旦那さんが知ったら...」
と話しかけると、女は羞恥を含んだ口調で、
「今は..、今は、あの人の事は言わないで..」
と答えたし、
「どうです。
旦那さんも、こんなにいやらしく、痛いことはしないでしょう?」
と聞けば、
「あっ、貴方が..、貴方の方が残酷です..。」
と言いながら、自分から激しく腰を動かすのだった。
克介は、他人の妻をいたぶり、おもちゃにする満足感を感じながらも、
「こんな良い女を、妻にしている旦那が羨ましい..」
とも思った。
寝取るのも確かに面白い。
しかし、しょせん今夜限りだ。
女とは、こんなに淫らでいやらしくても、なんと可愛く愛らしいものだろう。
ずっと自分の物に出来たら..。
不倫とか寝取りとかではなく、結婚して妻として..。
犯し疲れて、うとうとしながら、克介はそんなことを思っていた。
いつの間にか、囲炉裏の近くの板の間に、厚い敷物が敷かれていて、そこに横になった克介に、女はそっと暖かい夜具を掛けてくれた。
翌朝、克介が目を覚ますと、女はもう起きていて身支度を終えていた。
「二人一緒だと、村の人に見られたら困ります。
私が先に戻って、お客様は無事です、と家の人に伝えます。
この家の中は、後で私が片付けに来ますので、どうかこのままで..。」
そう言うと、女は一人先に家から出ていった。
克介は自分の身支度をして、女より30分ほど遅れて家を出た。
雪も風も止み、雲が切れて太陽光が差し込み、積もった雪をまぶしく照らしている。
克介が家の前の道をたどると、あっと言う間に見覚えのある道に出た。
そこから20分も歩かずに、昨日昼食をご馳走になった家に着いた。
家の前に、数人の男女が集まっている。
克介の姿を見ると、慌てたように近寄って来た。
どうやら克介は、昨日の豪雪で行方不明になっていると思われているらしい。
先に帰った筈の奥さんは、どうしたのだろう?
奥さんが旦那から命じられて、自分も承知して克介の一夜妻になったのなら問題はないのだが、それなら克介が行方不明になっていると旦那が考えるのもおかしい。
もしかしたら、奥さんは旦那に無断で克介との一夜を過ごし
「お客様とは会えずに、別の所で一夜を過ごしました。」
と旦那に言っている可能性もある。
こちらから、奥さんの事を言うのは待った方が良かろう。
そう思っている所に、その奥さんが他の女性が運転する車に乗って帰って来た。
「あなた、ごめんなさい。
病院の定期検診はちゃんと受けたんだけど、大雪で隣町から帰れなかったの。」
車から降りて旦那に謝る奥さんを見て、克介は愕然とした。
顔や雰囲気は似てるが、昨夜の女ではないのでは?
「あなた、お腹の赤ちゃんは順調よ。」
旦那に報告するその言葉で、克介は昨夜の女は、絶対にこの奥さんではないと確信できた。
昨夜の女は、断じて妊娠などしていなかった。
今、奥さんを見ると、もう臨月も近いのが服の上からでもはっきり分かる。
では、あれは誰だったんだ..?
帰って来た佳苗を家に入らせて、政雄は克介に昨夜はどこに避難したのかを聞いた。
克介は、神社から戻る途中に空き家があって、そこに勝手に入って一晩を明かした、と女の事を除いて話をした。
集まっている皆は不審がった。
そんな所に空き家があったかな?
囲炉裏がある家は、この集落にはもうそんなに残ってないが?
克介が昨夜は囲炉裏で火を炊いたと話すと、皆はその火の確認も必要だから、取り敢えず行ってみよう、と言うことになった。
克介は政雄の家で朝食を御馳走になると、皆を案内して昨夜泊まった空き家に向かった。
しかし、見つからなかった。
わずか20分程の距離なのに、途中までは雪に足跡も残ってるのに、道が山に入っていく辺りで、どう下りてきたのか分からなくなった。
取り敢えず皆は、神社で休憩することにした。
拝殿に丸くなって、皆は克介に色々聞いた。
「その家は新しかったか?」
「いや、かなり古いようで、柱も梁も太く、黒光りしていました。」
「窓は?その家にガラス窓やサッシがあったかな?」
「全部雨戸が閉まってたけど、そう言えばガラス窓なんかあったかな?」
「もしかしたら、その空き家に温泉みたいなものが有ったのでは?」
「そうです。石を積んだところから、お湯が流れ落ちるかなり大きな浴室がありました。」
克介がそう言った途端に、皆は頷き会った。
「あんた、山の神様に見初められたね。」
何のことか分からず、克介が黙っていると、皆の中で一番年上の男が話始めた。
「言いたくなければ、答えなくても良いが..」
と前置きして、
「昨夜、あんたは、女と一夜を過ごした筈だ。
そこで、温泉にも一緒に入っただろう。」
克介は答えなかったが、男は続けた。
「最近は全く聞かなかったが、わしが子供のころまでは時々あったらしい。
この山の神様は女神様で、時々男を誘って寂しさを紛らかすそうだ。
その場所が、必ず囲炉裏と石風呂のある大きな家らしい。」
そうか、それで皆が頷いたのか!
「その時の山の神様は、相手の男が好きな女や憧れている女の姿を借りて現れる。」
あの奥さんの姿を借りたのか..。
年配の男は、さらに続けた。
「ずっと昔の年寄りは、ここの地方に伝わる伝説の一夜妻が、山の神様になったと言う。
あんたが、一夜妻の伝説を調べたいと言う気持ちに、山の神様が気がついたのかもしれんな。」
克介はわずかに頷き、ごくりと唾を飲んだ。
もしあの女が、本当に一夜妻、山の神様だったら..。
生きている時に、散々性的な暴行を受けている
神様に対して、昨夜の自分は何てことをしたんだ..。
祟り、不幸事、そんな言葉が克介の脳裏に浮かんだ。
しかし、年配の男は言った。
「もしあんたが、昨夜山の神様と会ったのなら、恐れることは無い。
多分男と女の間の事をしたのだろうが、山の神様は、誘った男が満足するように尽くしてくださると聞いている。」
克介は、やっと口を開いた。
「何故、神様が..、人間に尽くすんですか?」
「良くは分からんが、人間の女でも、好きな男に尽くして幸せを感じるじゃろうが。
神様も女だから、多分同じじゃろうて。
まあ、女に尽くしたい男もおるけどな。」
神様を貶めるような意見だったが、克介には何となく納得できるような気がした。
「あんたが、山の神様に会ったのなら、それは良い事じゃと思う。
恐れずに、神様を敬い、大切に思っておれば、
あんたにきっと良い事があるじゃろう。」
大学に戻った克介は、教授の地位を手に入れることが出来たが、それより良い事があった。
小肥りで眼鏡を掛けた、目立たない容姿の30代の大学の事務職員と、ふとした粉とから交際を始め、半年後に結婚した。
夜の新妻は、山の神様ととても良く似ていた。
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