光雄を積んだトラックは、村外れで一度止まり、荷台に幌を被せた。
そのまま走り続けたが、昼頃に一度だけ山の中の林道に入り、そこで光雄は檻から下ろされて大小便をすることが出来た。
直ぐに檻に戻され、それからほぼ1日トラックは走り続けた。
空気に海の香りがする町に着いたのは、もう夜10時過ぎだった。
迷路のような道を通って、軽四トラックが入ったのは、海に面した頑丈な窓の無い倉庫だった。
シャッターが開いてトラックが中に入ると、家畜のような臭い匂いが籠っていた。
光雄はやっと檻から出してもらえると思っていたが、それは甘かった。
フォークリフトが来て、手錠、ボールギャグをした光雄が入った檻を、似たような檻が積み重ねられている上に運びあげて置いたのだ。
眩しい照明に慣れてくると、重ねられた檻には、それぞれ裸の人が入っているのが分かった。
皆、光雄と同じように、口を塞がれているらしい。
こんな残酷な事があるか!
動物より酷いじゃないか!
光雄は呻いたが、まだそれだけでは無かった。
30分もせずに、光雄の檻の上にも別の檻が重ねられたのだ。
その檻には女が入れられていたが、声は出せないが、半狂乱で狭い檻の中で暴れていた。
小便を垂れ流し、それが光雄に掛かる。
小便だけでなく、生理中のようで血まで混ざっていた。
もしかして、大便も垂れ流しなのだろうか。
倉庫の中に籠った悪臭から、多分そうなのだろう。
光雄は一晩中眠れなかった。
翌朝、作業員がホースで重ねられた檻に水を掛けて洗って回った。
汚物は洗い流されたが、中の裸の人間はずぶ濡れのままだった。
その後、移動式の足場に乗って、作業員が檻毎に、僅かな時間だが、中の人間の口を塞いでる器具を外して、水と食べ物を与えてくれた。
光雄に食べ物を与えてくれた作業員は、多分優しい人間だったのだろう。
光雄が水に浸されて柔らかくなった古いパンを飲み込む間、これからの事を簡単に話してくれた。
お前達は、多分明後日の船で外国に運ばれる。
船に積まれても、多分船倉の中で今と同じように運ばれるだろう。
航海中は船酔い等で辛いだろうから、無理をしても今のうちに食べておけ。
逃げようとしたり、俺のような作業員に助けを求めたりしても無駄だ。
前にそうやって、見せしめの為に生きたまま解剖された女がいた。
生きていたら、良いこともある。そう考えるしかない。
それだけ言うと、また光雄にボールギャグを嵌めた。
光雄の上に重ねられた檻の女は、食べ物を与えられる前に暴れて、家畜用の電撃棒を当てられ気絶した。
光雄にこれからの事を教えてくれた作業員のように、優しい作業員ばかりではない。
昼頃、二人の作業員が倉庫に入って来て会話した。
新入りに前からいる先輩が色々教えてるようだ。
「先輩、臭いですね。でも、若い女の子ならともかく、何故男や年増とかも売られるんですか?」
「内臓移植用、医療実験用、危険な作業現場で機械を使うより安いから。
色々需要はあるもんだよ。」
「移植用って、死んじゃわないですか?」
「そのものズバリ、拷問処刑ショー用ってのもあるし、セレブの人肉グルメってのもあるそうだ。」
「料理の食材ですか?
美味いのかなあ?」
「人間の活け作り的なのもあるらしいよ。」
二人は全くの他人事として話していたが、それが聞こえた檻の中の人間には、たまらない恐ろしい話だった。
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