佳苗の住む地方は、豪雪地帯と言う程ではないが、それでも冬は雪に覆われることが多い。
佳苗の集落は村でも山際の方だから、12月になると道以外は白一色だ。
集落に肇と言う37歳の男がいる。
34歳の妻と13歳の娘と三人暮らしで、農業の他に山仕事もしている。
山に詳しいので、冬場に山越えで隣の村までの急ぎの荷物使いを頼まれることもあった。
その日は12月20日で、この地方では山の忌み日と言われていた。
この日は、女神である山の神様が、自分の山を見回る日で、人間は山に入らない慣わしだった。
しかし肇は、どうしても隣村まで届ければならない急ぎの書類を頼まれ、午後1時頃に家を出た。
行きは良かったが、午後4時に帰り始めた時は、天候が急変していた。
激しく降る雪のため、5時過ぎには峠辺りで道を失いかけた。
辺りはもう暗く、懐中電灯を灯したが、昔の懐中電灯に良くあることで、豆電球が切れて点かなくなった。
雪明かりで、道らしい場所を探しながら何とか帰りかけたが、遂に周囲を立木で囲まれた場所で完全に道を失った。
肇はもともと剛毅な男で、山の妖怪やもののけ等は信じてなかったが、こうなると急にそんな山の怪談を思い出し、自分の周囲を不気味な気配が取り囲んでいるような気になり、パニックに陥った。
こんな時は、タバコを一服して落ち着くものだ。
年寄りから聞いた事をやってみようとしたが、手に持ったマッチの箱が、突風だろうか不可解な力で手から飛ばされ、雪の中に消えてしまった。
その頃、肇の家では、妻の幸恵と娘の直子が肇の帰りを待っていた。
幸恵はお祓いや予言をする程ではないが、少しは霊感的なものを持っていた。
幸恵は嫌な胸騒ぎを感じ、家の中の神棚と仏壇にお灯明を上げて拝んだ。
さらに娘の直子に、台所の土間の竈、同じ土間にあるお風呂の焚き口、そして台所の板の間の囲炉裏に火を絶やさないようにと言った。
お陰で家の中は温かく、乾燥した薪が燃える煙の良い匂いがした。
幸恵はその煙の匂い、家の中の温かさが夫に届くように、と神棚に祈った。
山の神様は女神様だ。
だから、基本的に人間の女は山に入らない。
男の方は、神様に敬意を払えば、山の危険や怪奇から守ってもらえるが、時として気に入られ過ぎて、山の神様から拐われることもあると言う。
特に今日は、山の神様の忌み日なのだ。
幸恵は夫が危ない状態になっているのを、家に居ながら感じた。
温かい煙の匂いが、夫に届いた気配は感じない。
夫が冷たいものに包み込まれていくような、不吉な予感がする。
もっと強い霊能力者や修験者なら、己の信じる神仏の加護により、山の神様を説得して遭難しかけた人を助ける事が出来たかもしれない。
しかし幸恵が出来るのは、私や娘やこの家全体が夫を待っているのだ、と言う思いを夫に届かせ、弱っている夫を励ますと言う、テレパシー的な呪術だけだった。
やがて幸恵は、着ていたモンペや普段着を脱ぎ去り、ズロース一枚となって祈り続けた。
夫から抱かれて、自分がいっぱい感じて、切なく喘ぐ様子を思い浮かべた。
思い浮かべるだけでなく、自らの豊かな乳を手で揉んだり、乳首を摘まんだりと、淫らなオナニーの様なことまで始めた。
思春期の直子は、母が霊感を持っていて、これまでも父や自分の危機を救ってくれたことを知っていたので、今母が神棚の前で一見淫らな姿をしているのも、きっと遭難しかけている父を助けるためだろうと感じていた。
直子は竈、焚き口、囲炉裏と危なくないように火を調整すると、母のそばに来て、自分も何か出来ないか、と聞いた。
幸恵は1ヶ月程前、風呂上がりにシュミーズ姿で居た直子を偶然夫が見て、後で自分に「直子も女らしく、きれいになってきたな。」と言ったことを思い出した。
幸恵が、
「直ちゃん、貴女もシュミーズになりなさい。
そしてお父さんに、『私はこんなにきれいになったから、お父さんに見てほしい』ってお父さんに伝わるように真剣に祈るのよ!」
と言うと、察しの良い直子は、直ぐに着ていた綿入りの袖無し、セーター、ブラウス、スカート、タイツ等を脱いでいった。
妻と娘が半裸になって祈っている時、肇は峠で雪に埋もれかけていた。
正体の分からない不思議な気配が、倒れた自分の周りをぐるぐる回っているような気がするが、目には白い雪が風に煽られて陰を作るだけだ。
もうその正体を知ろうとするのも、きつくなってきた。
顔を雪の上に伏せて、目を閉じた時、何か匂いを感じた。
何の匂いか直ぐには分からなかったが、やがて頭の奥から記憶が蘇った。
これは、幸恵の肌の匂いだ..。
そう分かると、今度は脳裏に、いつも一緒に寝る時の寝間着の前をはだけた幸恵の姿がはっきりと浮かんだ。
幸恵..、俺には過ぎた妻だったな..。
可愛い直子も産んでくれたし..。
俺ももう、幻を見るようになったか..。
ところが、その脳裏に浮かぶイメージは、幸恵が肇のチンポを入れられて淫らに、しかし可愛く悶える姿や、一緒にお風呂に入っている時に、恥ずかしげにそっと肇のチンポに唇を当てている姿、と鮮明に具体的に浮かぶようになってきた。
脳裏に浮かぶイメージは、幸恵だけではなかった。
お下げ髪で白いシュミーズだけの娘の直子の可愛い姿。
まだ乳臭い若草のような軽い汗の臭い。
その姿は、父親である肇に見られて、羞じらいながらも大人になっていく自分を見てほしい、と言ってるようだ。
そうだ!こんな所で遭難出来ないんだ。
俺は家に帰らなくては!
そう思ったら、今度は家の囲炉裏や竈で薪を燃やす匂いが漂ってきた。
味噌汁や煮付けを料理してる匂いも混ざっている。
肇は雪の中からむくっと起き上がると、匂いの来る方向を見た。
すると、さっきは立木で塞がれてると思っていた方向に、人が通れる幅の道らしい空間があった。
肇は立ち上がると、よろよろとだが、匂いの漂ってくる方向へと歩き始めた。
家では、神棚の前に並んで祈っていた幸恵と直子が、ほぼ同時に「見つけた!」と呟いた。
しかし経験が深い幸恵は、まだ油断しなかった。
「直ちゃん、お父さんに話し掛けるのよ!
帰ったら温かいお風呂に入ろうね、とか声に出しても良いから、お父さんに呼び掛けるの!」
そして自分も遠い峠辺りにいる夫に思念を送り続けた。
「早く帰って、私を強く抱いて!
新婚の時みたいに!
私が恥ずかしがっても、遠慮なくして良いのよ!
四つん這いでも、私が上でも、貴方の好きな通りにしてちょうだい!」
直子も真剣に父に思念を送る。
「お父さん、私、大人になりかけてるの。
もうすぐお母さんみたいにきれいになるから。
子供の時より、ちょっときれいになった直子をお父さんに見て欲しいの!」
もちろん性的なことばかりではない。
温かいお風呂に一緒に入りましょう。
貴方の好きな茸汁を作ってるのよ。食べたら暖まるわよ。
お風呂に入って、お腹一杯ご飯を食べたら、三人で暖かいお布団に寝ましょうね。
大丈夫よ。直子も夫婦の夜の事は知ってるわ。
私を抱いてくれた後、三人で一緒に寝るの。
とても暖かくて安心出来るわよ。
二人の思念が次々に肇の脳裏に届いた。
肇の頭の中は、諦めや恐れが吹き飛ばされた。
それまで見えていたような不思議な気配など、どこかに消えてしまった。
ほんの数メートル歩くと、雪に覆われているが見覚えのある山道に出た。
2時間後、肇が自分の家の裏口、台所から身体の雪を払って入った時、妻と娘は半裸のまま肇の冷たい身体に抱きついてきた。
その夜、肇は幸恵と直子と三人で風呂に入り、温かい食事を食べ、そして温かい布団の中で幸恵を抱いた。
直子も同じ部屋に居たが、賢い娘だから両親の性交を邪魔することなく見守っていた。
深夜になって突風が吹いた。
幸恵は何か不可解な物が家の周りを回っているような気配を感じた。
幸恵はそっと起き上がり、また神棚に灯明を灯すと、手を合わせた。
「山の神様、この人は私の夫で、娘の父親です。
連れて行かれたら、困ります。
夫が神様の日に山に入ったわびは、改めていたしますので、今日はお帰りください。」
神様の声が聞こえた訳ではないが、家の近くにいる何かが去って行くのが分かった。
良かった...。
幸恵はお灯明を消すと、寝間の布団に戻ったが、またそっと夫のチンポを握った。
大きくて逞しかった。
「山の神様、こんな素敵な旦那を持つ私を羨ましかったのかもしれない..」
そう思いながら、幸恵はまたゆっくりと眠っていった。
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