咲枝ちゃんはしばらく呆然としていたが、はっと気を取り直した。
夢だろうか?
いや、確かに自分で帷子と腰巻きを脱いで裸になってるし、脱いだものも布団と一緒に畳んでいる。
この寒い時期に、寝ぼけて全裸になるなんてあり得ない。
直ぐに腰巻きと帷子を着ると、離れにいる筈のおばさんに会いに行った。
そこには、勝次おじちゃんとおばさんが、ぐっすりと寝入っていた。
二人を起こしてさっきあった事を話すと、大変驚かれた。
「わしはここで、神様役の扮装をしようとしてたんだが、いつ眠ってしまったんだろう?。
確かに御神酒は少し飲んだが、酔っぱらって寝入ってしまうなんてことは無い筈なんだが..」
「私は火鉢に炭を継ごうとしたところまでは覚えているんだけど..」
二人とも自分が寝入ってしまったのが納得出来ず、これは本当に神様がお出ましになられたのだろう、と咲枝ちゃんに言い出した。
しかし二人とも、「咲枝ちゃんが正直だから、神様は寿ほいでくれたんだ。」とむしろ良い事だったと祝ってくれた。
「さあ、もう神様はお帰りになった。
あちらは寒いから、おばさんと一緒にお休み。」
おばさんはそう言って、咲枝ちゃんを自分が練る布団に入れて寝かしてくれた。
佳苗の家に、夫が祀りの役目が終わって帰ってきた。
咲枝ちゃんが会った神様は、佳苗の夫が変装したものだった。
勝次おじちゃんともおばさんとも、前もって打ち合わせしていて、柏手と共にお宮の周りで鈴の音が響いたのも、二人がしたことだったのだ。
佳苗は冷えきって帰ってきた夫に、熱燗の酒をすすめた。
夫はほんの数杯飲むと、直ぐに佳苗を寝屋に連れ込んだ。
寝物語で夫は、咲枝ちゃんとのやり取りを話してくれた。
「本当に愛らしく、正直で健気な娘だ。」
「でも、たとえ相手が神様だと思っていても、裸になったり胸を揉まれたり、その子は可哀想でしたね。」
「それなんだが、咲枝ちゃんの胸を触ったり、つべに剣を当てたりしてたら..、何だか無性にお前を抱きたくなってな..」
「本当に私を抱きたいって思ってくれたんですか?
咲枝ちゃんが可愛くて、咲枝ちゃんを抱きたくなったんじゃないんですか?」
「それがな、咲枝ちゃんの裕太に対する健気さを思ったら、同じように健気なお前の事が頭に浮かんで仕方がなかったんだ。」
「まあ、そんな...」
祭りの夜も、佳苗は大切な夫の熱い身体で抱いてもらい、夫の厚い胸に顔を着けて幸せを感じながら寝ることが出来た。
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