主婦が晒されるのと違い、中学生が裸になるのは、学校と言う別の社会でいじめられたりと問題が起きやすい。
しかし、咲枝ちゃんはもともと学校でも、真面目だし皆に優しい良い子だと評判のであったし、学級全体の生徒も、村や集落のお祭りの大切さを充分理解していた。
いよいよお祭りの前夜、暗くなってから咲枝ちゃんは自宅から送り出された。
真っ白な一重の着物の下は、これも白の腰巻きだけだった。
昔は嫁入りを模した行事に相応しく白無垢姿だったらしいが、戦争中の物資の不足からか、どうせ脱がされるんだから、と考えられたのか、今は床入り前の姿で家を出るのだ。
お下げは解かれて、肩より下に櫛笥ずられた。
靴下も足袋もなく、素足に草履履きだ。
命や貞操の心配は無いと言うものの、やはり両親は娘が可哀想に思う気持ちを消せなかった。
咲枝ちゃんは、自宅の玄関先を出ると、村の青年団の若い衆が担ぐ白木の輿に乗った。
11月も下旬で寒風も吹くのに、咲枝ちゃんは薄い一重の白衣で輿の上に正座する。
寒さで硬くなった乳首が、薄い生地を透けて見えた。
輿が咲枝ちゃんの家から出ると、集落の皆が道の両側に並んで見送る。
同級生達の多くが、四辻のところに集まって見送ってくれた。
前の方に女の子が並び、後ろから見ようとする男の子の自然から咲枝ちゃんを守ろうとする。
そんなことをしても、女の子より身長が多額なり始めた男の子から、輿の上に座っている咲枝ちゃんの姿は見えてしまうのだが、あくまで「女の子が、これから神様に嫁入りする友達を、不埒な男の子達の目から守る」と言うのも一つの儀式であり、男の子がじろじろ見ようとするのも、「今年神様に捧げられる女の子は、可愛く清らかなのだ。」と言うことを表す儀式の一部なのだ。
だから男の子は、一重の生地越しに咲枝ちゃんの肌や乳首が透けて見えても、それを悪くはけっして言わない。
「咲っぺ、去年までガリガリだったのに、ふっくらなってるな。」
「おっぱい、まるいお椀みたいになってるぞ。」
「やっぱり神様のお嫁さんになるだけに、きれいだよな。」
「うん、いつも優しいし、勉強もできるし。」
まだ思春期になったばかりの男の子なりの、誉めことばだ。
女の子からも、誉めことばが投げられる。
「咲ちゃん、本当にきれいよ!」
「頑張って!後でどんなだったか、色々話してね!」
「咲ちゃんが選ばれて、私、羨ましいわ!でも、咲ちゃんがきれいだから仕方ないわね。」
咲枝ちゃんが神様に捧げられるために、今のように恥ずかしく寒い目に合っても、女の子達から見たら、「神様に相応しい見目麗しく心映えの美しい乙女に選ばれた」と言うことは羨ましいことなのだ。
捧げ物の乙女は、鎮守の神様が祀られる神社でも、集落から少し山を登った奥の宮で一夜を明かす。
奥の宮へは、集落から小川を渡って谷川沿いに登っていくのだが、神職や捧げ物の乙女の世話をする既婚女性以外は、小川に掛かる橋から先に渡ることができない。
その橋から上流を見ると、50メートルほど先の川原で、輿から降りて水に浸かって身を清める乙女の姿を見ることが出来た。
この時期、池や貯水槽の水は冷たくて、とても浸かったりできない。
しかし、源泉から湧いたばかりで、まだ外気の寒さで冷やされてない谷川の水は、我慢すればなんとか浸かることが出来る。
50メートル先で、同級生の咲枝ちゃんが水に浸かる姿を見て、同級生の女の子達から「あーっ、水に入った!」「咲ちゃん、かわいそう!」「頑張ってね!本当に頑張って!」
と一斉に甲高い声がきこえた。
男の子達はあまり声を出さない。
それより目を凝らして、咲枝ちゃんの乳首が透けて見えないか、と見つめていた。
咲枝ちゃんは、輿から降りると、教えられたとおりに、両手を前で合わせて、そっと足から谷川の流れに入っていった。
見守るのは、世話役の近所のおばさんと輿を担いでくれた四人の青年団のお兄さん達だ。
普通なら、裸で冷たい水に浸かるなんて、13歳の女の子にとって出来ることではない筈なのに、実際は咲枝ちゃんは、恍惚となって水に浸かっていった。
咲枝ちゃんなりに心の中は、
私、神様に捧げられるだわ..。
恥ずかしくても辛くても良いわ..。
と高揚した状態だった。
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