集落全体の稲刈りも無事終わった。
稲穂の乾燥も晴天に恵まれた。
その年は豊作である上、佳苗の妊娠など集落にとっては善い事が重なった。
神様の田んぼで収穫した稲穂も脱穀されて、新米としてお供えする準備も調った。
集落では、田んぼと水の神様ともう一柱、鎮守の神様を祀りをする。
田んぼと水の神様は、これまで述べたとおり、夫婦の和合による実りがお好きだ。
特にお祭りの形は取らないが、祠の前での夫婦の和合等により、集落の皆はこの神様をお祀りする。
これに対して、鎮守の神様は外から来る悪い悪霊等から集落を守るとされている。
鎮守の神様のお祭りは、御輿も出るし、露店も店を並べるから、小学生くらいの子供にとっては楽しい行事だ。
しかしこちらの神様は、大人の人妻ではなく、清らかな少女がお好きなのだ。
だから、思春期の女の子がいる家の母親は、ちょっと心配する。
もちろん本当に神様に生け贄にされて、処女を奪われたり、食べられたりすることはない。
しかし象徴的に、一人で社の奥に寝かされて、そこで神様に処女を捧げる真似事をする。
その年は、中学1年の咲枝ちゃんと言う女の子が選ばれた。
お下げ髪にそばかすがあり、ほっぺが赤い、よく両親のお手伝いをする良い子だった。
もちろん両親の自慢の娘で、神様の妻にされると決まると、両親は誇らしいと共に心配でもあった。
母親は他所の村から嫁いで来たので、自分は経験がない。
ご近所の奥さんに色々聞いて、娘の処女が散らされる訳ではないのは分かったが、それでも思春期の男を知らない娘が、裸体を他人に晒してたり身を冷水で清めたりするのに耐えられるだろうか、と心配だった。
咲枝ちゃんは、毎日学校から帰ると、夕御飯までは家の手伝いをする。
牛を飼っているから、その餌やりや藁の敷き替え等をして、お母さんと夕御飯の用意をするのだが、お祭りの10日前から、家に帰るとセーラー服も下着も脱いで、膝丈の短い腰巻きと、一重の白く短い帷子しか許されなくなる。
靴下もだめだから、天気が悪ければ寒い。
それでも咲枝ちゃんは、弱音を言わずに仕切りりに従った。
救いは、そんな咲枝ちゃんの姿を見るのは、大人だけだと言う事だろう。
18歳以下の子供は、咲枝ちゃんの家に近づくのを厳しく止められていた。
18歳以上の集落の男にとっては、咲枝ちゃんは妹のような存在だから、咲枝ちゃんの半裸を見て興奮する者はあまり居なかった。
同じ年配の男の子達は、やはり興味津々である。
何とか短い腰巻きの下が覗けないだろうか、帷子から胸が透けないだろうか、と用事も無いのに咲枝ちゃんの家に近づこうとする。
それを、咲枝ちゃんの友達の女の子が見つけてホウキや竹の棒で叩いて、咲枝ちゃんを守る、と言うような感じだった。
咲枝ちゃん自身は、寒さは殆ど気にしてない。
でも、やはり制服のスカート丈が膝下10センチ以上だったこの時代に、膝よりはるかに短い腰巻きの下にズロースを穿かないことは、やはり思春期の女の子として羞恥心を高めた。
多分これは、神様に捧げられる女の子が穢れのないことを表そうとしてるのかもしれない。
しかし、そんなり理由を咲枝ちゃんには教えてもらうことはなかった。
理不尽だと思っても、そうするのが決まりだった。
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