佳苗の裸での田植えのお祀りのお蔭だろうか、その年は集落の田んぼは皆豊作となった。
農家は忙しくなり、妊娠した佳苗も忙しく働いた。
夫も義母も、佳苗には無理はさせなかったが、甘やかすことはなかった。
特に義母は、まだ田舎の生活や農業の要領が分からない佳苗に、ああしなさい、こうするのよ、と具体的に色々と教えてくれた。
何をすれば良いか分からずうろうろするより、佳苗にとってはその方がありがたかった。
あの神様に捧げる稲を作る棚田も、稲がたわわに実った。
ここは佳苗が稲刈りをすることになっているが、佳苗のお腹が妊娠のため大きくなってきたため、全てを一人で刈り取るのは無理があった。
夫と義母が集落の世話人に話をして、集落の比較的若い女性にも手伝ってもらうことになった。
若いといっても、処女はだめである。
子供を産んだ健康な女性ならば、人妻でも寡婦でもよい。
本来稲作に関する呪いは、清い乙女が関わる地方が多いのに、この地方では子を産むか、子を産んだ女性が行う珍しいケースだった。
神様の田んぼの稲刈りの前日、手伝ってくれる女性三人、一人は40代、あとの二人は30代の奥さん達が集まった。
三人が上座に座り、夫と義母それに佳苗が正座して頭を下げた。
「どうぞ、よろしくお願いいたします。」
すると40代の奥さんが、
「こんな仕事をさせていただくことになり、こちらこそありがとうございます。」
と三人を代表して答えた。
義母が、
「では身をお清めください。」
と言って、三人をお風呂に案内した。
佳苗も義母に言われて、一緒に入浴させられたが、義母から「先輩の奥さん達の言うことを聞くのよ」と言われた。
神事の前の禊の筈であるが、実際は奥さん連中四人の楽しい入浴だった。
お互いの家庭のこと、先日町に行った時のこと、子供のこと、そして夫との夜のことまで、ワイワイと明け透けな話をしながら、笑いながらお互いの身体を洗いあった。
佳苗が40代の奥さんの背中を流そうとしたら、皆から止められた。
「あら、だめよ。今年初めての人は、皆から浄められるのだから。」
そう言うと、皆で佳苗を低い浴室用の椅子に座らせた。
椅子に座って身体を洗うのは楽だが、足が拡がってはしたない格好になるので、佳苗はこの家に来てから使ったことがなかった。
しかし、この時は半分無理やりに座らされ、三人掛かりで全身を洗われた。
それこそ、足の指の間から、脇の下、耳の後ろと隅々まで洗った後、最後に一番年上の奥さんが佳苗の正面にしゃがんだ。
慌てて佳苗が足を閉じようとすると、後の二人が「だめ!」と言って佳苗が足を閉じないように膝を押さえた。
年上の奥さんが、佳苗の股間に向かって手を合わせると、パンパンと柏手を打って頭を下げた。
義母さんから言われてたのはこの事か、と佳苗は理解した。
これも安産のための祀り事なのだった。
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