(ダメよ・・・今日はダメ・・・)
由美子の葛藤には、もちろん理由があった。
バレてしまえば全てが終わる危険な欲望・・・それを自覚するからこそ、行為は必ず水曜日に行っていた。
それは学内の教員に通知されたルールで、『毎週水曜日は残業をしない』『特に泊まり込みは厳禁』とゆうものだった。
もちろん激務の教師達だ。さすがに残業をゼロにはできない。
しかし学園祭などの行事の準備期間などは泊まり込む人の多いなか、確実に用務員を含めた全員が校内から出て行くと確信できる日ではあった。
些細な効果すら確信できなかったが、それでも由美子にとって大切な危険回避だった。
由美子にとって、それは自分を抑える最後の一線だったのかもしれない。
(ダメよ・・・危ない・・・もしも見つかったら・・・)
何度も何度も心の中で否定した。
けれどその日の午後に 保健室の利用者は一人も来ず・・・保健室に閉じ込められた由美子の頭から、妄想が消える瞬間はなかった。
そして1時間、2時間、3時間が、静かに過ぎていった。
そして妄想の湧いた昼休みから7時間・・・すでに日が沈んだ暗い時間に、由美子はまだ保健室の中にいた。
(ダメよ・・・ダメ・・・)
そう思いながら、由美子は保健室を出る。
廊下を歩き、職員用の出入り口でカードをかざす。
「ピッ」と短い機械音を立て、由美子の退校時間が記録される。
しかし、由美子は外に通じるを開けなかった。
(ダメ・・・ダメ・・・ダメ・・・)
由美子は心の中で叫びながら、けれど昨日と同じように・・・毎週水曜日にそうするように、静かに保健室の中に戻っていった。
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