「あ、あのっ!・・・・あのっコレ!、これの他の月、ありませんか?!」
俺は雑誌を握りしめながら、店の奥に座る白髪の店主につめよっていた。
ベレー帽を被った白髪の男は、俺を見ながら目を真ん丸にしていた。
それはそうだろう。
俺でもそうなるだろう。
何せ突然、こんな中年のサラリーマンが、詰め寄ったのだ。
しかも手に持っているのはアダルト雑誌。
SM、露出、輪姦、、、なんでもありのアブノーマル雑誌だ。
しかし、さすがこんな古びた・・・いや、年季の入った古本屋の経営者だ。
これまで大勢の男に小説からエロ本まで売りさばいた経歴のなせる業だろうか?
ほんの数秒で表情を戻し、慣れた手つきで棚を漁った。
そして1分もしないうちに「今あるのはコレだけだね」と言いながら、俺の前に3冊を差し出した。
俺が無言で固まっていると 少し焦れたのか「・・・で?」と言った。
「買うんかね?」
そう急かされ、俺は3冊とも購入した。
薄いアダルト雑誌が、3冊とも袋に入れられる。
俺が差し出した千円札4枚を受け取ると、1枚を突き返しながら袋を俺の手に握らせた。
店を出た後も、ずっと心臓がドキドキしていた。
家に入ると、時間は9時過ぎ・・・まだまだ妻が帰宅する時間ではなかった。
俺はスーツの上着さえ脱がないまま、狭い家の中の小さな城・・・
4畳にも満たない小さな『書斎』の中に入った。
鞄を投げ出し扉に施錠すると、紙袋から買ったばかりの3冊の雑誌を取り出す。
そして3冊を順番にしようと並べた時、俺は1つ落胆した。
2冊は目的通り、18年の11月号と19年の6月号だった。
古本屋で偶然手にした19年9月号から遡ること10か月前と3か月前・・・
24ヶ月連続掲載達成!・・・と書かれていた期間に充分に収まっていた。
しかし3冊目は残念な事に、20年の8月号・・・つい先月に発売された ほとんど最新刊だろう日付が書かれていた。
(仕方ない・・・確かめもしなかった自分が悪い・・・)
そう思いながらも、興奮したままの手で19年9月号と書かれた1冊を机に置いた。
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