「まったく・・・いったい なんで俺がこんな・・・」
山崎浩二は不機嫌そうな顔で、隠そうともせずに不満を口にした。
宿直と校内の見回りを押し付けられた事が どうしても納得できない。
自分がただの用務員である事を棚に上げ、いつまでもブツブツと文句を言い続けていた。
「なにが水曜日の亡霊だ・・・くだらん・・・・」
それは突然の辞令だった。
水曜日の深夜、学校の廊下を白い影が移動しているのが道路から見えた・・・そんな通報が この3か月で3件寄せられた。
そしてそれに対しての、誰かの思い付きで出された業務命令。
確かに学校としては不審者の不法侵入の可能性もあるから 一応の対処をしておかないと 何かあった時に保護者に言い訳のしようがない・・・。
(・・・それはわかる・・・理解できる・・・・しかし、いったいなんで、それが俺なんだ!)
山崎はその でっぷりと突き出た腹を さらに大きくさせながら 憤りの息をふ~っと吐いた。
時間は8時45分・・・朝まではまだまだ時間がある。
どれだけイヤな仕事だったとしても、さすがにここでサボって首にでもなったら目も当てられない・・・。
「まったく!・・・これじゃ八方塞がりだ!」
そう悪態をつきながら、業務の一番の要点である 目撃証言にあった2階の廊下に視線を向けた。
「・・・・・はぁぁっ?」
山崎が そんな素っ頓狂な声を上げたのは 9時32分だった。
「おいおい・・・まさか・・・・えぇ?」
山崎の視線の先、教室が並んでいる本館の2階の廊下を 確かに白い影が移動している。
パニックになりながらも 実習棟の裏側の隅にある用務員用の小屋を飛び出した。
けれど懐中電灯を忘れてすぐに戻り、本館の入り口に到達し・・・そこでようやくマスターキーを忘れた事に気づき・・・
何度もバタバタと往復しては、30分もかけて ようやく本館の入り口を開錠した。
懐中電灯をかざしながら、ゆっくりと進んだ。
正直、恐怖を感じる自分がいた。
ありえないと思い込んでいた白い影を目の当たりにしたのだから 当然かもしれない。
とにかく山崎は慎重に、ゆっくりと廊下を進み、階段を1段ずつ登っていった。
階段の角から頭だけを出して廊下をうかがう。
じろじろと何度も確認し、ようやく廊下を進む。
そしてその廊下で・・・2年の階の男子公衆便所の扉の前で、奇妙な白い塊を見つけた。
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