医師には、自分の事情をなかなか他人に話せないと言うストレスがあったのだろう。
森を信用してか、自分なりのSM哲学とでも言うものを語った。
今の世間では、ツーショット等で探したSMパートナーと安易に行為をする人が多いが、賛成しかねる。
身元を知られることにドキドキ感を感ずるだろう等は、性交したい男の作り上げた妄想、誘導に過ぎない。
か弱い女性を責めることの肉体的、精神的な難しさは、ここのサークルの会員なら分かっているが、世の中にはそれを知らずにAV等で知った危ない行為を無責任にやろうとする人が多すぎる。
自分は普通の形の結婚と家庭作りが出来ない。
だからこそ、愛し合う夫婦のSMに憧れ、その代償行為として、このような仕事もしている。
医師の言うことは、森にとってもゆうかにとっても、納得できる部分が多かった。
医師はしばらく一人で話続けたが、それが長話となったことに気がつき、話題を変えた。
「お二人はまだ、ご夫婦ではありませんね。」
森は正直に答えた。
「はい、結婚を前提に交際しています。
実は昨夜、彼女の処女を貰いました。」
ゆうかは、裸で岩に座り、少し身体が冷えてきたところだったが、この一言で全身が恥ずかしさで赤く染まった。
「やはりそうでしたか!
いや、そんな気がしていました。」
そう言うと、医師は改めてゆうかの裸体に目を注いだ。
「きれいに、剃りましたね。」
「はい、何かの形で、初夜を記念したかったんです。」
「いや、良かったと思いますよ。
表情と言い肌の美しさと言い、お嬢さんは昨夜された事を幸せに思ってますね!」
森は何度も、この医師にゆうかがあの奥さんの娘だと言うことを、言いたいと思ったが、辛うじて思い留まった。
ゆうかの両親からあれほど信用されて、二人の特殊な性癖を応援してる人だ。
やがては、自分達のことも正直に話さねばならない時が来るだろう。
その時は、何もかも包み隠さず打ち明けよう。
森もゆうかも、その日が来るのは間違いないと感じた。
二人はチェックアウトの後、列車の指定席に並んで座り、帰途についた。
森は熟睡している。
ゆうかは、そんな森の手をそっと握って、これからの二人の幸せを思った。
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