あの事件以来、全くの無気力状態だった私は、大学も行かず株もほったらかしだった。
しかし、災い転じて何とやらだ。
判決後控訴することもなく刑が確定した頃、久々にニュースを見たところ、持ち株が連日のストップ高でかなりの儲けになっていた。
とりあえず売っておこうと売りに出した翌日、その会社のスキャンダルが報じられた。
見事に売り抜けた後は少し世間から離れたく思い、行く当ても期限も決めずに長期ツーリングに出かける事にした。
家の管理代わりに自由に使っていいとの条件でめぐみさんにお願いする。
『そうか。まぁ麻衣子のことは一旦忘れよう。20年後どうすればいいかなんて誰にもわからないさ。
それより本当にこの家好きに使って良いのか?』
『どうぞ。◯◯って会社知ってるでしょ?この前スクープされた。あの前日全部の株売り切ってたので、もう働かなくても生きていけるくらいのお金は有りますから(笑)
なんならめぐみさん嫁いで来ますか(笑)?』
『馬鹿か。20年後ワタシが麻衣子にコロされるわ(笑)』
携帯と財布だけ持って出発する
首都高に入りSAで行き先を決めるためパンフレットを眺める
しかしこれといった場所が決められない
財布の小銭を数えると530円
よし!53台目の車のナンバーの所へ行こう!
10…20…50…51...52...53!
あれ?バイクか…まぁバイクでもいいか
駐輪場の隣に停まるハーレー883
ナンバーは静岡
……うーん微妙に近いな…
『何か?』
いかん!微妙な表情でバイクを睨んでいたか!?
『あっ!いえ、これからどこ行こうか考えてて…行き先決まってなくて…53台目だったけど静岡で…』
『えっ(笑)なになに、ちょっと話聞かせて(笑)』
そう言って883から降りてヘルメットを脱いだのは、肩口くらいの茶髪にティアドロップのサングラス、ジーンズに真っ白なライダースを羽織り、ドクターマーチンの足音を響かせる寧子との出会いだった
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