あの分隊長、中野が捕まったそうだ。憲兵隊の大勢は戦犯として捕まったそうだが婦女子に性暴力を加えることが喜びだったこの男には重大な
戦犯では無く所謂性犯罪が適用されていた。
中野は山本という部下と二人で逃亡していたが幸か不幸か誰も訴える人間がいなかったのだ。現在でもそうだが当時はもっと被害者が公に
なるのを恐れたためであろう。
石川夫妻も決して知られたくない出来事であり早く忘れてしまいたい出来事でもあった。
そんな中野達に足が付いたのは拷問の様子を収めた写真を食うに困って売って凌いでいたのだが偶然それがある男の目に留まったのだ。
被害者の写真の中に裕子の痴態も混ざっていたのだ。
被害者の多くは辱しめにあって自害したり獄死したりして検察も裏が取れなかった。
そんな時に駐留していた米軍の一人が裕子の写真を手に入れたと言う訳だった。
検察官がやって来て起訴するので協力してくれと言う。忘れてしまいたい記憶がまた蘇った。
幸せになるためには裁判で勝ち取るしかない。そう検察官に促されて二人は承諾した。
この検察官も裕子の恥ずかしい写真を見たのだろう、恥かしさと同時に体の奥で疼くものも感じたの事実であった。
一体何人の人間が写真を買って自分の性器や肛門を熟視しているのだろう。そしてそれが石川裕子と言う名の元華族であることを知っているのだろうか?
疑いは直ぐに晴れた。新聞が半分興味深げにそれを伝えたのだった。
『元華族夫人、勇気ある訴え』
そんな記事が戦後の楽しみの少ない世の中に突如流れたのだ。野次馬が裁判所に押し寄せ二人を取り囲んだりした。
裁判は早く決着が付きそうだった。中野も山本もさすがに観念していた。
「裕子の奴、一段といい女になりやがったなあ、せめてムショに行く前にもう一度、いや、まだやりたりねえことが一杯あるぜ。」
「なんせ一週間だからなあ。」
「でもなあ、あれは本人も合意の上だぜ、、あんなに濡らしてもっとって、なあ。」
「あの8ミリさえあればなあ。裕子のよがり声も聞こえるし、いい証拠になるんだが、、」
「もしそれが出て来れば名誉棄損で訴えることも出来るんだが。」
弁護士の田中がそう言った。
「そうか、この際、やけくそだぜ、名誉棄損でもなんでも訴えてくれ。」
「相手の弁護士はこんな事件には慣れてますから法廷女のあなたが聞くに堪えない言葉で質問して来ますから決して臆さないように気を付けて下さいよ。」
合意の上だったとして訴えられた時は裕子もまさかと思った。
合意の上のような気がする、何度も逝かされ自分から求めもした。
だが証拠は残っていない。法廷でその事を証言するのは余りにも恥ずかしすぎる。
中野の話を信じて弁護士も裕子がマゾの体質であることを見透かした。何としても裁判に勝ってあわよくば自分も裕子を抱きたいと思った。
彼らの死に者狂いの反撃は凄まじかった。
祐子以外の女子に対する凌辱の証拠もある以上その罪は堂々と認めた。
だがそれに関しては被害者の訴えが無かったため罪には問われなかった。
「裕子夫人、この男達は自分の罪を認めているのです。でも貴女だけは同意、、いえ、、貴女から求められたと彼らは言っていますよ。無実の
人間を貴女は刑務所に送る積もりですか?」
「女性器に男根を挿入されるだけでは飽き足らずその後何て言ったか覚えてますか?」
法廷で公衆の面前であたかも素っ裸にされているような気がした。体だけでなく心の中まで露わにされて裕子は決心した。
「公衆の面前でこれ以上恥を掻くのはこれ以上耐えられません。出来れば、、示談にお願いいたします。」
中野や悪徳弁護士、聴衆の者ばかりか検察官までが勝者になったような気がした。
弁護士の元に野次馬から多くの応援や要望の手紙が寄せられた。
三人寄れば文殊の知恵と言うが読み切れない程の手紙の中には中野の想像にも及ばない裕子に対する示談書、中には奴隷契約書のようなものまで
寄せられた。
当時はストリップ劇場などもなく赤線で売春が認められている程度だった。
従って今程風俗や裸などに対する取り締まりは無かったと言っても良かった。
どうやら観衆は裕子の裸が見たかったようだ。
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