僕は鍼灸院に足を運んだのです。
ただこの時は奥さんをどうこうしようなんて気持ちは一切ありませんでした。
僕「こんにちは」
奥さん「あら藤岡さん、また痛むんですか?」
僕「いえ今日は違う要件で伺ったんですがご主人おられますか?」
奥さん「主人は今日は鍼灸の出張なんです」
僕はうっかりしていました。
ここは足腰が悪くて来られない人のために毎週土曜日の昼からは、ご主人がいないのを忘れていました。
僕「うっかりしていました、じゃあ奥さんにちょっと見てほしいものがありまして」
奥さん「あら、なにかしら?」
僕は鍼の先端が入っだジプロックと病院で書いてもらった診断書を奥さんに手渡しました。
それを見た奥さんの表情がまたたく間に青色へと変わっていったのです。
奥さん「藤岡さん、これ本当なんですか?」
僕「もちろんですよ、ちゃんと病院のサインもあるでしょう」
すると奥さんはおもむろにしゃがみ込み床に手をついて謝ってきたのです。
奥さん「藤岡さん、申し訳ありません」
僕「奥さん、手をあげてください。僕はそんなことをしてもらおうと思って来たんじゃないんですよ」
奥さん「じゃあどうして?」
僕「お二人には本当に親身になって治療してもらって感謝してます。だけどこれは医療事故ですよね。だから今後のこともあるからはっきりさせておかないと、と思いまして」
奥さん「仰ってることはごもっともですが、この件は内密にしてもらうことは出来ませんか?もちろん慰謝料は出来る限りのことはさせて頂きますので」
僕「そう言われましても…」
奥さん「もしこのことが公になったら、やっと軌道に乗ってきた当院が潰れてしまいます」
僕「んー、困ったなぁ」
奥さん「お願いします、私に出来ることながらなんでもしますので」
僕「何でもって本当ですか?」
奥さん「はい、黙ってもらえるなら約束します」
僕は困ったフリをしながら考えました。
もしかしてこれってチャンスじゃない?
僕は前から奥さんに好意を持っていましたので奥さんをどうにか出来るんじゃないのかと思ったのです。
僕「わかりました、僕も事を荒立てようとは思っていませんので」
奥さん「ありがとうございます」
僕「じゃあ毎週土曜日に僕にマッサージをしてください」
奥さん「え?それだけですか?慰謝料は?」
僕「別にお金には困ってないのでいらないですよ。ただこれは僕と奥さんとの二人だけの秘密ということで」
奥さん「私もそのほうが助かります。あの人ああ見えてプライドが高いので自分がミスをしたと知ったらどうするかわかりません」
僕「じゃあ来週の土曜日からよろしくお願いしますね」
奥さん「こちらこそ配慮頂きありがとうございます、背一杯頑張らせて頂きます」
こうして僕は鍼灸院を後にしたのです。
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