再び沈黙がになる・・・。
この無言の時間がしほを苦しめ、そして追い込んでいく・・・
でも、頭では分かっているけど
しばらく、しほは動けなかった・・・。
男は、ゆっくり立ち上がり、アロマオイルなどを眺めていた。
恐らく、あの口コミの投稿とこの動画をセットで投稿されたらもう終わり・・・
それを自覚させるために動画を観せた意味も、しほにも分かっていた。
口コミの裏付けとなり、完全に言い逃れができないことを・・・
男は優しい紳士的な雰囲気を身にまとい、部屋の中を無言で眺めている。
その優しいオーラの中から感じる、絶対的な無言の圧力・・・
しほは頭の中で色々なことを考える・・・。
もし拒否したら私はどうなるの?
具体的に脅迫をしてきている訳ではない・・・
でも、あのコメントと動画を観せられたことで、その意思があることは明確にされた・・・
そこから先はしほ自身に考えさせる・・・。
当然、しほの中では最悪の状況しか頭の中に浮かばない・・・
実名店舗と担当者名入りでSNSに晒し物にされるかもしれない。
色々な掲示板にコメント入りで公開されるかもしれない・・・
スタッフだけではなく、家族や友達、同業者などに数珠繋ぎで拡散されていくのかもしれない・・・
仲間もお店もすべて失うことになる。
私だけの問題ではない、ひなの夢でもあり店でもある。スタッフの店でもある・・・
それをすべて壊されることしか頭に浮かばない・・・
沈黙がどんどん、どんどん
しほを追い込み絶望の淵へ追い込んでいく・・・
ひなやスタッフに申し訳ない思いでいっぱいだった。
人一倍、責任感の強いしほは、自分で蒔いた種を自分で刈り取るしか方法がないことを自覚する・・・
しほは絶望の表情を浮かべ、無言で部屋を出ていった。
今日出勤しているもう一人のスタッフの元に向かい
「スペシャルコースのお客様、かなり疲れが溜っていて、ぐっすり寝てられるので起こしたくないから、予約の調整とか終わってから調整するね」
「あと電話も取れそうなら、なるべく出てもらっていい?出れない時は、そのままにしておいて、転送されるスマホで私が受けるね。」
「宜しくお願いしますね」
スタッフの顔を申し訳なくて見れなかった。
スタッフ
「しほさん、大丈夫ですか?なんか調子悪そうですけど・・・」
しほ
「えっ?全然大丈夫よ。ありがとう。疲れが出てきているのかも。」
「いつもそういう細かい所まで気にしてくれてありがとう。優しいね」
「でも、そういう観察力は大事だからね、お客様もきっと喜んでくれるから、これからも大事にしてね」
スタッフ
「ありがとうございます。でも、しほさんお別れみたいな言い方しないでくださいよぉ」
しほ
「ごめんごめん。じゃあ宜しくね」
スタッフ
「承知しました。」
しほは精一杯の笑顔を作り別れた。
そして、しほは部屋に戻り、そっと鍵をかけた・・・
部屋に入ると現実に引き戻され
今にも泣きだしそうな表情で施術台の上に座った・・・・
一体、何が始まるのか怖かった・・・
男がしほへ近づいてきて前に立つ・・・
しほはあまりの恐怖に体が硬直する。
男は顔をゆっくりと、しほの顔の高さに合わせ
しほの目を見つめた。
あまりの恥ずかしさに視線を逸らす。
ヒロ
「しっかり私の目を見てください。ちゃんと私の目を見てください。」
しほは怯える目で見つめる。
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