突然の予想外の命令に奈々は動揺した…
「?????」
画面の文字を何とか読解しようとするが、
何度読んでも、頭の中が疑問符で埋め尽くされていく…
痴漢される側ではなくて、奈々さんが痴漢をする側…?
知らない男性にいきなり痴漢したら捕まる可能性もある…
痴女の概念も奈々には分かっていない…
そもそも、その男性が下りる駅なんて分かるはずもない…
疑問だらけで、頭がパンパンだった。
色々なことをご主人様に質問したかったが、
電車の中で質問できる内容でもない…
奈々は急いでご主人様に確認事項を入力しはじめるが、自分のスマホでないので、緊張と焦りもあり、上手く文字を入力に時間がかかり、そうこうしているうちに、無情にも電車は次の駅に停車する…
奈々はかなり動揺して焦っていた…
何にも疑問が解決できていない中で一気に人が流れる…
そして、新しい空気と共に、電車に人が流れ込んでくる…
奈々は緊張で体が固まっていた…
そんな中、電車に乗り込むと途端に人を強引に掻き分け、一心不乱にこちらの場所に近づいてくるサラリーマンが視界に入った。
その瞬間、奈々の顔は青ざめ、体は硬直し心臓が止まったかのような衝撃が襲う…。
奈々は、その男が物凄い勢いで近づいてくるのを見て、我に返り一瞬でパニックになり、後ろの手でグリーン車の車両のドアを必死に開けて逃げようとしたが、この時間帯は通り抜けができないように施錠されており、全く開かなかった…
奈々は下を向き、キャップで必死に顔が見えないように身を潜めた。
奈々の心の声
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「な、なんで…」
「なんで会社の同期の剣持君がこっちに来るの…」
「本当に待って、待って…」
「本当にこっちに来ないでお願い…」
「な、なんで…」
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あろうことか、ご主人様と茉凛は人の波に押されるようにして、奈々の目の前から少しずれた。
奈々の願いも虚しく、剣持は息を切らしながら奈々の目の前に立つ…
剣持の右横はトイレの壁で人はいない…
左側の車いすスペースがある側に、ご主人様と茉凛が奈々を囲むように立った。
茉凛はワイヤレスイヤホンでスマホ画面をずっと見ていて、ご主人様は新聞を折りたたみながら読むカモフラージュをしていた。
新聞は周りからの視界を遮る意味もあった。
奈々は連結ドアとトイレの壁、
目の前を剣持とご主人様と茉凛の3人に囲まれる配置になった。
奈々は逃げ場のない状況に絶望する…
そう、これはご主人様が仕掛けたことだった。
ご主人様は、奈々に変装をさせ知り合いにテレビ電話でオナニーを披露させる辱めを好んで何度も行っていたが、会社の同期の剣持は一番最初に披露させた。
わざわざ新しいスマホを契約して、奈々の電話帳をそのままコピーし、辱め用スマホとして使用していた。
そのスマホから剣持宛に昨日メッセージを送っていたのだ。
電車の時間と車両と場所を指定して、
「ぜひ来てください」
とだけメッセージを送っていたのだ。
当然、剣持もあのテレビ電話以降、その番号を登録していたし、何度も電話をしたが繋がらなかった。
剣持もあの刺激が忘れらず、また電話がかかってこないか心待ちにしていたのだ。
そんな中、メッセージが入り、期待が膨らんで
浮かれるようにこの場所に来たのだ。
剣持は奈々の前に立ち、そわそわし、辺りをキョロキョロ見渡していた。
近くにいるのは、目の前の奈々、その左横に少し離れて茉凛、後ろも側にいる女性…
そして目の前にいる奈々の頭に顔を近づけ
剣持
「あ、あなたがビデオ通話の方ですか?」
小さい声で囁いて反応を見る。
奈々の心の声
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「そ、そうだ私、変装してるんだ…」
「私って気づいていない?」
「この間のテレビ電話した時とまた違う変装だし、それにも気づかれてない?」
「でも、待って…待って…えっ!?…まっ、まさか…」
「ターゲットの男性って…」
「剣持くん…?」
「そんな…どうすればいいの?」
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奈々はあまりの緊張から上手く呼吸ができなかった…
でも、茉凛の手がける変装が完璧であるから、剣持の口から「奈々」という単語が出てこないことがせめてもの救いだった。
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