…俶子の時よりも、かなり強い刺激で、僕にも襲ってきていた。
学校に在席中は、持って生まれた美貌と、端正な容姿の良さで、長い間、マドンナとして
学校中の憧憬の的だった多香子を、今、こうしてはしたない姿勢をとらせて、正常の性行為
とは違う箇所を、つらぬき犯している、自分を自分で振り返りながら、僕は少し不思議な気
持ちに陥っていた。
特段にこれといって、人より優れたところは何もなく、極めて普通に高校二年生まで平凡
に生きてきている、自分のどこに、学校のマドンナと憧れられ、崇められてきた多香子のよ
うな美女を、いとも容易く篭絡させられる魔力があるのか、このことが当人である自分でも、
皆目わかっていないところが、自分ながらも不可思議なところだった。
それでも現実として、僕は今、間違いなく、衆人の崇拝物存在でもある多香子を臥し倒し
て、通常の行為ではない箇所をつらぬいている。
多香子への腰の淫靡な律動を続けながら、他へ気を廻そうと、僕はそんなことを頭の隅で
考えていた。
「あぁ…ゆ、雄一さん、わ、私、ほんとに変になる。い、いえ、もうなってるかも?」
多香子はのほうも、もう忘我の境地の、かなりのところまで陥っているようで、痛みを訴
える声は出なくなっていた。
時間の経過のせいなのか、多香子の尻穴からの圧迫と摩擦が少し緩み出してきている感じ
がした。
同時に、多香子の胎内への僕からのつらぬきが、滑らかな感触になってきている気がした。
この家に来る直前まで考えていた、多香子への仕置きが、これだとしたら僕は、自分で自
分の甘さというか、未熟さを、蔑み愚弄するしかないと思った。
僕に内緒で、学校内で僕の素行調査をしようとした、多香子に鉄槌をと目論んで、彼女の
品位を貶めるべく、尻穴を犯そうとしたのが、形勢的には完全に目論見外れなりそうだった。
策士、策に溺れるではないが、多香子を辱めための行為に、自分までが溺れていたのでは、
何とも情けない事態というしかなかった。
心の中で地団駄を踏みながら、僕はやにわに腰の律動を早め、多香子を責め倒しにかかっ
た。
多香子の身体と声の反応が、忽ちにして大きく激しくなった。
それが僕の、それまでの我慢の限界のダムを、一気に崩壊させ、堪えに堪え、溜まりに溜
まっていた白濁を、多香子の胎内深くに大量に放出させた。
ベッドに仰向けに倒れ込んでいた僕の胸に、多香子は顔を載せるようにして、寄り添って
きていた。
「なぁ…」
汗ばんでも尚、心地のいい多香子の髪の匂いを鼻孔に感じながら、僕は白い天井に目を向
けながら切り出した。
「俺って、ほんとに何にもない人間だけど、どうしてなの?」
「え?」
「どうして俺なんかと?」
「私…理由が言えない」
「何で?」
「わからない」
「わからないって…」
「理由なんていいの。…好きでいさせて」
「勝手で我儘だよ、俺」
「私が好きになるんだからいいの」
「そういう言いかた、嫌いだ」
「ごめんなさい」
「それと、俺には…」
「…村山紀子さん?」
「知ってるのか?」
「この前、校庭で…」
「あれでわかる?」
「あなたより、村山さんの気持ちが…」
「ふーん、そんなものかい?」
「あの人の顔見て、負けたと直感した」
「よくわからん」
「わからなくていい。好きでいさせてさえいてくれたら」
「見ての通り、俺はだらしなくて、節操ない」
「たまに思い出して」
「そうする」
それだけの会話が終わった時、多香子が顔を上げてきて、ふいに唇を重ねてきて、僕もそ
れに応えた。
「あなたの匂いを持って帰る」
といって、多香子がシャワーを使わなかったので、僕も同じように言って、家の灯りと暖
房を消して、二人は玄関ドアを出て、寒い夜の帳の中を、身体を寄せ合って、駅までの道を
歩いた。
駅で、恋人同士が別れるように手を振り合って、違うホームに向かった。
電車の座席に座りながら、ベッドで多香子と語り合った会話だけで、自分の目論見のすべ
てが事足りたと思ったが、その後で、お互いの体温を確かめ合った、プロローグがあってこ
その、あの会話だったのだと、僕は改めて思い直した…。
続く
(筆者後記)
何度も何度もの投稿ミスと、投稿遅延を改めましてお詫びします。
沢山の愛読ありがとうございます。
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