「村山さんって、陸上の短距離やってて速いんですってね。引継ぎで初めてお喋りしたん
だけど、スポーツしてるだけあってスタイルいいし、奇麗な人ね」
睡魔があっという間に、どこかへ飛んで消えてしまっていた。
それでも、素振りだけは眠そうなままで、
「あ、そう」
とぶっきらぼうに、僕は多香子に返した。
「あなたも知ってるの?」
「名前だけは…同じクラスじゃないから」
「そう…でも何となくよかった」
「よかったって…何が?」
「ううん、私の思い込み。もう、寝ましょ」
自分のほうがマッチポンプみたいにしておいて、と口に出しては言えないことを思いながら、
僕は頭から羽毛布団を被って、寝るふりをしたが、僕と紀子と多香子の三人の絡みは、これか
らの最重要注意点だなと、肝に深々と銘じて、改めて、多香子に向けて、おやすみ、と声に出
して言った…。
続く
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