主人が命を絶ってから一週間後、私は借金のカタで苦界に売り飛ばされてしまいました。見ず知らずの男と毎夜、褥を共にしなければならないと思うと恐怖で脚の震えが止まりません。「いろは楼」という名前の店に着くなり下着まで脱がされ、縄で厳しく縛り上げられてしまいました。店の女主人は、私に玄関で正座して客待ちするよう命じました。正座で座ると玄関のガラス戸に私の憐れな姿が映っています。私は惨めで涙を抑えることが出来ません。
引き戸がスーッと開いて、太鼓腹をした赤ら顔の男が入ってきました。私は恥辱に震えながら、消え入るような小さな声で「いらっしゃいませ」と言いながら体を深く折りたたみました。「これは三条社長の奥様ではありませんか。この度はご愁傷様でした。しかし何ですな、三条家の奥様が身を落とされて、丸裸で縛られたお姿になられて、こんな場所でお相手して頂けるなんて、結構な時代になりましたなあ。」「あ、あなたは銭本さん!」この男は主人の会社の財務部長で、会社が倒産に追い込まれたのはこの男の公金横領が原因でした。私は煮えたぎるような怒りと屈辱で全身を震わせて慟哭しました。
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