「生粋の御嬢様:2」
周りから、自分がどんな目で見られているか!?そんなことは、どうでも良かった。とにかく、一人になりたい!!ただ、それだけを思って、駅のトイレへと駆け込む。
そして、落ち着きたくて、まずはおしっこをしたいと思い、スカートに手を掛けた瞬間、気付いた。ファスナーが開いたままであることを・・・・・
しかし、もはやそれさえもどうでも良かった。
心音は、スカートを捲り上げ、ショーツを下す。だが、その時に嫌でも感じてしまう股間やショーツのヌルヌルとした感触・・・・。
(もう・・・。もう・・・私は・・・・・・・・)
チロチロとおしっこを漏らしながら、絶望感に押し潰されそうになる心音。
そして、僅かながらおしっこをした後、紙で股間を拭く。
(何で・・・・痴漢なんかに・・・・・・・)
初めて感じる、愛液のヌルヌルとした感触は、心音と言う御嬢様が、淫らで浅ましい女へと転落してしまったことを証明しているかのようだった。
しかし、そんな絶望感に心を痛めながらも、心音は感じていた。紙で股間を拭いた瞬間、電流が駆け抜けるような、凄まじい快感が走ったことを・・・・・
(私の身体が・・・へ・・変っ!!)
こうして、ショーツを下したまま、便座に腰掛け、動くことも出来ない心音。
そして、思考力が失われたた彼女は、時が過ぎていくことさえ気付かず、茫然と佇んでいた。
この止まってしまった「時」を再起動させたのは、スマホに掛かって来た電話だった。
心音は、ハッとして電話に出る。
「どうしたの? 乗るって言ってた電車、もう駅を出てったけど、心音、どこにもいないじゃない!」
埼玉のことなど何も知らない心音の為に、友人が駅で待ってくれていたのだが、彼女が現れないので、心配して電話を掛けてきたのだ。
「あぁっ!・・・ごめんなさい。・・・急に、体調が悪くなって、途中の駅で降りちゃったの。悪いけど・・・・今夜は、・・・・・・ごめんね。」
と、友人が訪ねる。
「まさか・・・・・・。言ったでしょ。女性専用車両に乗らなきゃダメだって・・・。そうなんでしょ。心音!」
「ごめん。・・・・・今夜は、一人にさせて・・・・・・」
心音は、それだけ言うと電話を切ってしまった。
(これから・・・どうしたら・・・・・??)
まだ、はっきりとしない意識のまま、ショーツを上げる。
(だ・・・だめっ!!)
濡れたショーツが冷たい感触をもたらし、心音はそのショーツを改めて下げ、そのまま脱いでしまう。
(タクシーで、マンションまで帰ればいいんだし・・・。ショーツは、捨ててしまえば・・・・)
そう思い、濡れたショーツを小さく丸め、汚物入れに捨ててから個室を出る。
誰にも自分を見られたくない!
そんな気持ちで下を向いて歩き、改札を出ると、すぐ目の前に停車していたタクシーに乗り込む。
そして、運転手に顔も見られたくない・・・と、ぼぉぉーーっと、外を眺めている。だが、この時、心音は気付いていなかった。トイレで、スカートのファスナーが下りていることに気付いたのだが、ブラウスのボタンが外されていることには気付かず、そのままになっていたことを・・・
これは、心音が、いかに動揺していたかを物語っているのだが、それはともかく・・・運転手の方が、気が気ではなかった。
そして、車を走らせて五分ほどが経った頃、運転手が言う。
「お嬢さん。このまま警察へ行きますか?」
「えっ・・・????」
まさか、何も話していないのに、自分が痴漢に遭ったことなど分かるはずがない、と思っていた心音は、思わず聞き返す。
「まずは、ブラウスのボタンを嵌めて下さい。お嬢さん。・・・・気になって・・・・」
「あぁっ!・・・・はい。」
ようやく、自分の状況が呑み込めた心音は、慌ててボタンを嵌める。
しかし、結局、警察には寄ることなく、自宅マンションへと向かってもらうことにする。
(電車を降りる時も・・・、ホームに降りた時も・・・、改札を抜ける時には駅員さんたちにも・・・私は見られていたんだ。ブラウスのボタンを外されたまま、ブラをした胸の谷間を晒しながら・・・・・)
痴漢をされ、傷心の心音の姿を、実際、数多くの人たちが見ていた。だが、誰にも見られたくない!と、身体を小さくして小走りに逃げていく心音に、結局は誰も声が掛けられなかった。
改札を抜ける際、駅員だけは、ブラウスのボタンが外されたままになっていること、そして痴漢の被害に遭った事実があるかどうかを確認したかったのだが、声を掛ける間もなく、タクシーへと乗り込んでしまった為、それっきりになってしまった。
自宅マンションに戻った心音は、まず、バスルームにゴム袋を持ち込み、この日、着ていた服もブラも脱ぎ捨て、ゴム袋に入れた。そして、熱いシャワーを浴びながら、下劣で邪悪な犯人に汚された身体を洗おうとした。
(何で・・・私が・・・・??何で・・・・・)
そう、心の中で繰り返しながら・・・・。
そして、いつものようにボディソープを専用のスポンジに染み込ませ、身体を洗うのだが、いつもと同じではなかった。
肌が、異常なまでに過敏になっていたのだ。それでも、身体を洗わない訳にはいかない。そうして、なるべく刺激を与えないように、肌に滑らすようにスポンジを動かす。
胸を洗う時には細心の注意を払うのだが、それでも軽く乳首にスポンジが触れるだけで、身体がビクッと反応してしまう。しかたなく、手で身体を撫でるように洗うのだが、それは、まるであの男に触られているようで、それも出来ない!
(でも・・・汚された身体を洗わないと・・・・・)
心音は改めてスポンジを手にし、それまで感じたことがない淫らな快楽と闘いながら身体を洗う。そして、あのヌルヌルとした股間にスポンジを潜り込ませた時、思わず「あっっ!」と、声を上げてしまう。男によって乳首を責められた時以上の、衝撃とも言える快感に、一瞬、意識が飛んでしまうような感覚に陥ってしまった。
(あの男が言っていたのは・・・・・・)
心音は、電車内での記憶は、パニック状態ではっきりとはしていない。しかし、男の言葉は断片的に残っていた。
スカートの中に手を差し入れてきた時、「中には指を入れないさ」「女の最も感じる場所を、教えてあげるだけだよ」と言っていた。
その意味が、自分で股間を洗った時に、はっきりと分かったのだ。この場所のことだ・・・・と。
ゆっくりと、そして優しく股間を洗いながら、「一体、これが何なのか!?」「これが性的な快感と言うものなのか!?」「私はイケナイことをしているのか!?」そんなことを自問自答しながらも、心音は、その手を止めることが出来なくなり、次第に尻を淫らくねらせながら、熱い吐息と淫らな声が、無意識の内に溢れ出す。
(だ・・・・だめっ!これ以上続けたら・・・私の何かが、壊れてしまうっ!!)
心音は、そんな危機感を感じ、ようやく股間からスポンジをどける。そして、シャワーで身体を流すのを避け、手桶にお湯を注ぎ、それでお湯を身体に浴びるようにして泡を流す。
(どうかしているわ。・・・・今日の私・・・。早く、寝てしまいたい!全てを悪夢として忘れられるものならば・・・・・)
こうして火照った身体のまま、バスルームを出る。
そして、いつものように脱衣所に用意してあるショーツ、寝る時用のブラ、パジャマを着て、部屋へと戻る。
しかし、まだ時間としては早い時間。
そこで、ふと思い出した心音は、冷蔵庫に保管していた冷酒を取り出す。
これは、地方出身者の友達から、「うちで作っているお酒で、飲みやすいし、夜はぐっすり寝られるはず」と、もらった物だった。
そしてもう一つ。街を歩いていて見つけた、江戸切子のグラスを取り出す。ぐい飲みサイズで綺麗な物だったが、何を入れて飲んだらいいか分からず、ずっと飾るだけで放置していた物だ。
ベッド脇のサイドテーブルに置かれたライトだけを点け、冷えている冷酒と美しい江戸切子のグラス。それだけで、何か落ち着く雰囲気があり、トクトクとお酒をグラスに注ぐ。
まだ、お酒を飲んだことがない心音だが、大学生になれば大人だと認められているのだし、自己判断と自己責任において飲むのであれば、問題は無いはず・・・
そんな気持ちで、グラスを手にする。
(凄く・・・綺麗・・・・・・)
先ほどまでのことを忘れようとするかのように、煌く光の中で揺れるお酒の様子を眺める心音。
そして、それ口元に運び、恐る恐る口の中に流し込む。
自慢のお酒として娘に渡すだけあって、口の中で広がる甘くて芳醇な香りは、女性の好きな上品なアロマのようだし、喉越しはすっきりとして飲み易い。
こうして、一杯を時間を掛けて飲み終えると、心音の顔はほんのりと赤く染まり、フワフワとした心地よさに包まれる。
そんなこともあって、もう一杯・・・そして、もう一杯と、お酒を飲んでしまう。
しかし、さすがにこれ以上飲むと、危険かもしれないと思い、半分ほど残っているお酒を冷蔵庫に戻そうと立ち上がった。
(あぁーー・・・何?・・・これは・・・?)
普通に立ったつもりなのに、まるで雲の上に立っているような不安定さを感じ、よろけてしまう。
(酔うって・・・こんな風になるの!?)
心音は、こんな不思議な浮遊感は初めてで、お酒が好きになりそうだった。ただ、今は何も考えずに眠りたい。そんな気持ちで、お酒の瓶を机に戻し、そのままベッドへと倒れ込む。
そして・・・そのまま心音は夢の中へと落ちていった。
だが・・・・心地よい酔いは、素敵な夢を運んでくれる訳ではなかった。
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