芙美子の回想(その3)
(淫売の掟)
若いヤクザと、その後ろを寄り添って歩く女性が、長い廊下の向こう側に見えてきました。「典子、もっと速く歩け。」男の肩越しに見える女性は少し足取りを速めますが、すぐに前のめりになって立ち止まり、男に引っ張られて歩きはじめても、また前のめりになって立ち止まります。どこか痛いところでもあるのか、眉間にシワを寄せて耐え忍んでいるようにも見えます。若いヤクザと女性が部屋の入り口まで来て、私の視野に女性の全身が入ってきた時、私はあまりの衝撃で心臓が止まるかと思いました。
その女性は布切れ一枚身に付けてない色白の体を、江戸時代の囚人のように厳しく縄掛けされています。さらに驚いたことに、もっとも恥ずかしい部分を覆うはずの飾り毛が全くありません。あろうことか、その一番柔らかくて敏感な部分は、無残にも麻縄がきつく締め込まれ、深く食い込んでいます。私は、女性に対してこれほど残酷で屈辱的な仕打ちがあるとは想像もできませんでした。
ヤクザの一人が女性に近づいて局部に指を這わせ、「よう締まってるなあ。指ねじ込もうとしても入らんわ。」と言って笑いながら「典子、ところでお前なんで股縄締められたんや。」と尋ねました。女性は消え入るような小さな声で言いました。「私がもっと女らしくなってお客様に喜んで頂けるようにと、先生がなさって下さいました。」「もっとはっきり言わんかい。股縄の裏はどうなってんのや」
「オ……オメコとお尻の穴に……」私は、この世でもっとも卑猥な言葉を可憐な女性が発するのを聞いて愕然としました。「オメコとお尻の穴にお薬を詰めて頂きました。それから電気で振動するおもちゃをオメコとお尻の穴に入れて頂きました。最後に、落ちないように縄できつく締め上げて下さいました。」女性は羞恥で顔を真っ赤にして震えています。すると男は、ツルツルの下腹部に耳をぴったり当てて「ブーンって小さい音聞こえるわ。こりゃええわ。」と言って笑いました。女性は男から逃げようともせず、頬に涙を伝わせながらじっと耐えています。
一番恰幅のある男が「典子、新入りに十の掟を教えてやってくれ。」と言った後、私に向かって「芙美子、ええか。よう聞いとけよ。お前の立場がよくわかるやろ。」と諭すように言いました。女性は「それでは十の掟を暗唱させて頂きます。」と言って大きく息を吸った後、暗唱をはじめました。「一つ、淫売に堕とされた女は二度と元の世界に戻れません。二つ、淫売に堕とされた女は、布切れ一枚、身につけさせてもらえません。四六時中、素っ裸でいなければなりません。三つ、淫売に堕とされた女は、陰毛を生やすことを許されません。オメコの割れ目はいつも丸出しでなければなりません。四つ、淫売に堕とされた女は、牢屋を出たらいつも両手を後ろ手に縛られなければなりません。食事・排泄・交接中も縄をほどいてもらえません。五つ、淫売に堕とされた女は、排便・排尿を自由にさせてもらえません。許可が出るまで我慢しなくてはなりません。許可が出て排泄の姿勢を取っても、監視者から「はじめ」の号令がかかるまでは排泄できません。排泄をはじめても監視者がストップ」の号令をかければ直ちに排泄を止めなければなりません。六つ、淫売に堕とされた女は、オメコ・口・尻の穴をすべて使い、お客様にご奉仕しなければなりません。七つ、淫売に堕とされた女は、お客様が排出された精液を一滴残らず飲みほして、ごちそうさまでしたと言って感謝しなければなりません。八つ、淫売に堕とされた女は、お客様がお帰りになる前に、お客様の陰茎・睾丸・お尻の穴が完全に綺麗になるまで舌で舐め上げなければなりません。・・・・・・・」
あまりの衝撃で、私の意識は遠のいて行きました。
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