不意に来客を告げるチャイムが鳴り、友美の自慰行為は妨げられた。
(あ…杉田さん…)
リビングのソファから仰ぎ見たインターフォンの液晶画面に忌まわしい
隣人の顔が映っている。
友美は慌てて着衣を直し、パジャマの上にカーディガンを羽織って
玄関に向かった。
「おはよう友美さん、今日は町内清掃の日じゃないの…お迎えに来たわ」
杉田夫人が薄笑いを浮かべて友美に告げた。
そうだった…杉田夫人に言われていたのを忘れていた。
町内会では月に一度、日曜の朝にボランティアで町のゴミ拾いを行っている。
友美もこれまで数回参加したことはあったが、近所付き合いが苦手な友美は
殆ど欠席していた。
逆に主婦たちのリーダーを自認する杉田夫人は毎回欠かさず
参加しており、友美にもそれを強制していたのだ。
もっとも杉田夫人はゴミ拾いなどそっちのけで町の有力者に
取り入ったり、おしゃべりに夢中で、良識ある住民からは
眉を顰められているのだが。
「あんた、今日もサボるつもりじゃないでしょうね。
まぁそれならそれで友美さんと浮浪者たちの素敵な記念写真が町中に
出回っちゃうだけだけどね」
「友美、お客さんかい?」
その時、来客の気配に目を覚ましたのか夫が階段を降りて来た。
「あ、あなた…今日は町内会のボランティア活動の日なの…
杉田さんの奥様に誘われて私も参加することにしたの」
夫と杉田夫人が鉢合わせし、友美はビクビクして夫に説明する。
「あら友美さんのご主人、おはようございます…
お休みのところを起こしちゃったかしら…
今日から奥様も参加してくれると言うので嬉しくなって
お迎えに来ちゃいました」
夫人は怯える友美を一瞥し、夫に愛想良く話す。
「すみませんね…本当は僕が行くところなのに、家のことは
家内に任せっきりなもので…」
夫は町内会にはノータッチだったし、友美もあまり熱心ではないことを
知っていたのでバツが悪そうだ。
「いいえ、いいんですのよ…ご主人はお仕事でお疲れですものね。
日曜日くらいはゆっくりお休みにならないと」
「家内は世間知らずなもので、あまり役には立たないかも
知れませんが、遠慮なくこき使ってやってください」
夫の社交辞令に杉田夫人がニコリと笑う。
「友美さんはとても役に立ってくれると思いますわ。
お掃除も得意なようだし、誰とでも仲良くなれる人だから、
案外ボランティアには向いてるんじゃないかしらねぇ」
明らかにオシッコを舌で掃除させられたことや下着泥棒やレイプ犯と
深い関係の友美を皮肉っている。
友美は生きた心地がしなかったが、夫はぴんと来ない様子で
ただ杉田夫人に頷いているだけだった。
「あなた…それでは行ってまいります…」
一旦夫と寝室に戻り、友美はパジャマから動きやすいジーンズと
シンプルなブラウスに着替えた。
秋口の朝とあって若干肌寒く、カジュアルな上着を持っていない
友美に夫が自分のフード付きのパーカーを貸してくれた。
「友美は杉田さんの奥さんは苦手だって言ってたけど、
いつの間に親しくなったんだい?」
「え、えぇ…やっぱりお隣りだからあまりお誘いを断るのも
どうかと思って…」
「そうだね、近所付き合いは大切だからよろしく頼むよ」
夫は町内会の活動を友美に押し付ける形になってしまい済まなそうだ。
「でも引っ込み思案の友美がご近所と上手く行ってるようで嬉しいよ」
夫の言葉に友美は作り笑いを残して寝室を出た。
「遅いわねぇ、待ちくたびれちゃったわ。
人をこんなに待たせるなんて相変わらず傲慢な女ね」
玄関に戻ると杉田夫人は夫の前での愛想良さとは打って変わって
ぞんざいな口振りだ。
「それに何でジーパンな訳?
あんた、谷本さんに毎日ミニスカ穿くように決められてなかったっけ」
「うぅ…申し訳ございません…今日は夫がいたものですから…」
ネチネチといたぶる杉田夫人に友美は憐れみを乞う。
「脱ぎなさいよ…」
「えっ?」
「ジーパンを脱ぎなさいと言ってるのよ、聞こえなかった?」
「こ、ここでですか?」
そこはまだ友美の家の門を出たばかりの路上である。
狼狽する友美に杉田夫人が畳み掛ける。
「嫌ならいいわ…谷本さんに言いつけるから。
あの男のお仕置きってのも見てみたいしね…この前は刺青や永久脱毛の
話もウヤムヤになっちゃったけど、命令違反ともなると俄然現実味を
帯びて来るわねぇ…」
「そ、それだけは…」
友美は夫人の言うことを聞くしか無かった。
門扉の陰に隠れてジーンズを脱いだ。
「何だかパーカーの下のブラウスは目障りねぇ…あら呆れた、ブラまで
着けてるのね…ちゃんと露出狂のマゾらしくしましょうね」
杉田夫人の立て続けの注文に、家を出たときと同じパーカー姿でも
ボランティア活動に相応しいアクティブな装いはセクシー過ぎる
露出過剰なものに様変わりしていた。
夫のものでダブダブのパーカーはかろうじてお尻まで掛かっているが、
生足の太腿は付け根近くまで剥き出しで白いショーツがチラチラと
見え隠れしているのだ。
「こ、こんな恥ずかしい格好で町内会の人たちの前に出るなんて…」
「うふふ…町内会でも清楚な奥さんだって、意外とあんたのファンは
多いのよ。皆喜ぶわ…たっぷり目の保養をさせてあげなさいよ」
上機嫌の杉田夫人に付き従い友美は集合場所の公園に向かった。
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