「お客さん…どうしました?何かあったんですか?
事件ですか!ドアを開けてください!」
理江が110番の発信ボタンを押す寸前だった。
部屋の扉が激しく叩かれた。
このラブホテルの従業員のようだった。
派手な立ち回りの物音に何事かと飛んで来たのだ。
つい今までレイプされていた部屋に別の男性を招き入れるのに
躊躇したが、理江の心はクタクタに疲れていた。
警察が来るまで鬼畜のような3人と同じ部屋で一緒にいるのは
耐えられない。
誰かにいてもらった方が安心出来る。
理江は扉の錠を開き、部屋に従業員を招き入れた。
「この男たち、レイプ犯なんです…今、警察を呼びますから
それまでここに一緒にいてください」
部屋に入って来た男は室内を見回し、ベッドの前に並んで捕縛
されている3人の男に目を向けた。
「良いですよ…私がこいつらを見張ってますからお客さんは
すぐに警察に連絡してください」
その時、理江が冷静でいつもの洞察力を発揮していれば、
男の服装が入店した時に見た従業員が着ていたホテルの制服では
なく、靴も室内で働いているにしては泥に汚れていることに
気が付いていたかも知れない。
何より谷本たちを見た時に微かな笑みを浮かべてアイコンタクト
を取っていたのに気が付かなかったのは最大の失敗だった。
男は理江がスマホに目を落とした一瞬の隙に素早く理江の目の前
に回り込んだ。
「へへっ残念だったな、振り出しに戻るだぜ」
理江が最後に見たのはそう言って笑う男の顔だった。
お腹の強烈な一撃は男のボディブローだった。
理江は息も継げず悶絶しそのまま意識を失った。
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