一匹の牝犬を介して高級住宅地の住人たちと社会から落ちこぼれた浮浪者に
不思議な連帯感が生まれていた。
初めの内こそその男の人相風体にドン引きしていた町内会の面々は、杉田夫人たちが
気安く話し、またその男自身もサービス精神旺盛に変態パフォーマンスを繰り広げる
のを見るにつけ、親近感が増しているのだ。
「へへ、谷本さんって言いましたっけ?
あのおとなしかった池野さんの奥さんをここまで牝犬に調教するとは
大したものですなぁ…」
「谷本さん程のデカチンポになるとどんな女もイチコロなんでしょうな。
まったく羨ましい限りですよ…」
西山や中野などは尊敬の念さえ抱き、谷本に取り入ろうと褒めそやしている。
「ヒヒヒ…嬉しいことを言ってくれるねぇ…この女は俺の言うことは何でも聞くから、
あんたたちもたっぷり楽しんでくれや…」
谷本も満更ではなさそうである。
朝から時間も経ち住宅街にも他の住民の姿がチラホラ見られるようになっていた。
町内会に無関心で、行事に協力しない後ろめたさからいつもは町内会の一団に出くわすと
バツが悪そうに目を背けて通り過ぎる人たちも、そのあまりの奇妙さに目を奪われる。
メンバーはいつもの人たちだ。杉田夫人、長井夫人、田所夫人をはじめとしていやいや
参加している風な西山さんのご主人や中野さんのご主人…その他の人たちも代わり映え
しない。
しかし今日は一人見慣れない男性が加わっていた。
身なりからして薄汚い貧相な容貌の初老の男が中心になってゾロゾロと歩いているのだ。
その男が握っているのは犬のリードだろう…その先には犬が繋がれている。
えっ?犬?…首輪をされて四つん這いと言う犬の格好をしていてもリードに繋がれて
いるのはどう見ても全裸の人間の女だ。
(えっ、この人…!)
その場面を目撃した者は誰もが自分の目を疑った。
池野友美だ。
住民の中では若く、評判の美人な奥さん。
若いくせにこの辺りでは一番の豪邸に住んでいるいけすかない女。
清楚でおとなしく育ちの良さを感じさせる慎み深い女性。
その清純さがブリッ子に映り過剰に淑やかぶってるのが嫌味な女。
人によって友美への気持ちはまちまちだが、友美を知らない者はいない。
そんな友美が少なくとも犬なんかであるはずが無い。
「あら、ごめんなさいね…見苦しいところをお見せしちゃって…池野さんは今日から
町内会で飼う犬になったのよ…うふふ、恵まれた人ほど破滅願望が強いって言うけど、
池野さんの場合、人間を辞めて牝犬になりたいって聞かないものだから仕方なく
町内会の愛玩ペットにしてあげたの。
皆さんも是非これからは町内会の行事にも参加してくださいね」
と杉田夫人は会のアピールに余念が無い。
友美は杉田夫人の言葉を裏付けるように「ワン、ワン」と吠え、チンチンのポーズで
周りに愛想を振りまいた。
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