「・・・ほら」
言われて、玲奈の視線を追うようにタブレットを見ると、磨りガラスの向こう側に人影が通った。
そして間をおかずに、ピンッポーーーンと、間の伸びたインターホンの音が部屋に響いた。
そのまま固まる2人。
それを2度目のインターホンの音が急き立てた。
ピンッポーーーン
「・・・はぁーーい!」
わざとらしい大声を上げ、玲奈は玄関に続く廊下に消えた。
沙苗の視線はタブレットの画面に集中していた。
画面には廊下を手前から奥に歩いていく玲奈が写っていた。
沙苗が自宅に来た郵便の配達員にするのと同じように、片足だけをタイルについて片手だけで扉の鍵を開け、ノブを押す勢いで体勢を元に戻した。
配達員は開いたドアに片足をかけ、扉を開きながら玄関の中に入り込んだ。
年齢は、40を過ぎているように見えた。
その男が緊張に強張った顔で、玲奈と廊下の奥を交互に並んだ。
男の背中で扉閉じた音が、沙苗のいるリビングまで届いて、ようやく沙苗が違和感を感じた。
違和感は疑問を呼んだ。
頭が、思考が回転した。
配達員が自宅の中に?
ピザの配達のアルバイトにすら徹底されるルールを無視して?
・・・あんな色の作業服なんて見たことがない。
どうして何も言わないの・・・?
そんな疑問が渦巻く思考の先で、玲奈が男に左腕を見せつけた。
そこには一本の、石を連ねた数珠のようなブレスレットが光っていた。
男は玲奈のブレスレットを睨み、玲奈の顔と見比べ、無言のまま大きすぎるダンボールを床に置いた。
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