「俺はまだ休みが確定しないが、せっかくのお盆の連休なんだ。たまには温泉かどこか、旅行でも行ってきたらどうだ?」
俺は山崎に言われた通りの言葉を妻にかけた。
どんな反応が返ってくるか不安だったが、妻はすぐに「そうね」と答えた。
そして、「それなら13日にしようかしら」と、俺が提案しようとしていた日を自分から言い出してきた。
「そ、そうだな、その日が、いい、かも知れないな」
俺の反応はよほど惨めったらしかったようで、妻は笑った。
毎朝見ているはずなのに、俺は久しぶりに妻の笑顔を見たような気がした。
そして一週間後、13日の土曜の朝。
ボストンバックを持った妻を玄関で見送り、ソワソワとしながら約束の時間を待った。
そのホテルは郊外にあった。
エレベーターに乗り最上階を目指しながら「金持ちなんだな」と呟きながら、動画の女を思い出していた。
「この女ね、リョウコとゆうんですよ」
記憶の中の山崎の声が俺に呟いた。
「どうしました?あぁ奥さんの名前もリョウコでしたね」
脳裏に染み込むような、下品な笑顔だった。
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