「・・・あの・・・」
その一言で充分だった。
声の色、弱さ、震え・・・それぞれが涼子の全てを物語っていた。
心に渦巻く快楽を求める体への戸惑いと、その感情を包みこむほど強くて大きな欲望。
そして涼子の心は、快楽の誘惑に負けたのだと確信した。
山崎は自分を熱いと感じるほど興奮し、涼子が確実に堕ちていることを喜んだ。
「・・・どうしました?」
涼子は答えられない。
体が疼いて我慢ができなかったなど、あとたった1日なのに待ちきれなくて限界だなどとは言えるはずもなかった。
「今日は午後から休診でね・・・」
涼子は壁のカレンダーを見て、こんな事にも気づかないなんてと自責した。
今日は水曜日・・・他の科までは知らないが、婦人科が午前で終わってしまうことは半年の通院で知っていた。
知っていたはずなのに・・・その思いは、『診察』が絶対に受けられないとゆう事実とともに、涼子を絶望させた。
「・・・よければ、お宅に伺いましょうか?」
涼子は驚きと安堵に膝が崩れそうになる。
可能性が消えたはずの快楽が・・・『診察』が受けられる。
その申し出は、そもそも快楽の誘惑に負けた涼子の心が断れるはずもなかった。
山崎は電話の終わりに「何時に行けるかわかりませんが、今から『準備』をしておいてくださいね」と伝えた。
そして涼子は、その意味を理解しながらも「わかりました」と答えて電話を切った。
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