しのぶは思わず悲鳴に近い声を出してしまうが、清水は頓着することなく言葉を続ける。
「有馬さんの汚れた下着をさ・・」
「・・・」
「店員さんに見つけて貰って・・」
「・・・・・」
「片付けて貰おうよ。」
故意に途切れさせ、強調する清水の言葉がしのぶの精神に突き刺さり、鎮まりかけていた昂ぶりがブリ返す。
しのぶに限らず女性にとって、いや女性に限らず脱いだ下着を他人の視線に晒すことには、誰もが少なからぬ抵抗感があるものだ。
淫らな体液で汚れていることを容易に想像できる状態のものであれば、尚更のこと。
しかも使用済みの下着が置き去りになっているということは、脱いだ本人がどういう状態になっているのかは想像に難くない。
そして個室を出て会計を済ませ、しのぶが店を去るまでの間に清掃を済ませたスタッフに、汚れたショーツが発見される可能性は低くなかった。
『忘れ物ですよ』
そう言いながら例の学生アルバイトと思しき若い男性スタッフから、汚れた下着を差し出されたらどうなってしまうのだろう。
(・・あ。)
この日、何度目であろうか。
軽く達したしのぶは全身を軽く震わせながら、下半身から発した悦びを厭いながらも味わう。
(・・全然・・触れていないのに・・)
しのぶの内なる葛藤には目もくれず、清水は荷物を手に個室を出て会計に向かう。
鎮まりきらない悦びを振り払うように、しかし余韻を惜しみながら清水の後を追うしのぶ。
「ありがとうごさいましたぁ~!」
会計を済ませた清水に続いて店の自動ドアをくぐった瞬間、火照り、汗ばんだ身体が乾いた秋の空気に包まれる。
結論から言えば、カラオケボックスのスタッフに汚れた下着を、しのぶが店内にいる間に発見されるという事態は回避出来た。
いや、発見はされるのだろうが、それについて何らかのアクションがしのぶの身に及ぶことはなかった。
安堵して歩き始めるとスカートの内側に違和感を覚える。
普段であればショーツとストッキングで覆われている下腹部が、今日に限っては剥き出しになっており、しかも潤いを帯びた部分をスカートの内側に流れ込む外気が撫でていく。
昼過ぎの繁華街に人影はまばらだが、それでも開店の準備に忙しそうに動きまわっていた。
しのぶは不意に、それらの人々に自分の秘密が知られているような錯覚に襲われる。
(あの女、露出狂だってさ。)
(今、ノーパンで歩いてるんだって。)
(いやらしい汁が脚に垂れてるじゃないか。)
しのぶが妄想の虜になって悶えていることを知っているかのように、清水が問いかけてきた。
「有馬さんが今どんな格好で今まで何をしていたかを知ったら、この人達はどう思うんだろうね?」
外気に下腹部を肉体的に嬲られ、しのぶ自身の妄想と清水からの言葉責め、そして仮想ではあるが周囲の視線により精神的に嬲られ続ける。
それは駅に向かう路上を歩きながら、精神的な愛撫を加えられているようなものであった。
清水は反応を楽しむような視線をしのぶに投げかけると駅に向かう。
(・・解放・・してくれる?)
今のしのぶが心底から欲するもの、それは生殺し状態にある躰の昂ぶりを鎮める為に自慰に耽ることだけであった。
(・・トイレでも何処でもいい・・。)
このままでは他人の視線を憚ることなく、その場でスカートの下に手を差し入れて、路上で性器を弄り始めてしまうかもしれない、それ程までにしのぶは切羽詰まっていた。
だが、しのぶのそんな想いを裏切るかのように清水は進む方向を変え、駅に隣接した高層ビルに向かう。
(何処に向かっているの・・?)
清水は駅ビルの高層階にある展望台に向かうエレベーターの前で立ち止まる。
少しでもスカートが翻らないように、そして今も僅かではあるが溢れ続ける蜜が太腿に流れ出さないように歩幅を最小限にしながら歩くしのぶ。
(・・展望台?)
清水が既に呼んでいたのであろう、丁度その時、登りのエレベーターが到着するとドアが開いた。
他に乗客のいないエレベーターに乗り込んだ清水としのぶを乗せるとエレベーターが上昇を始める。
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