(・・こんな格好で・・行く・・の?)
しのぶは振り返ると清水に恨めしげな視線で問い掛けるが、柔和な笑みを浮かべたまま清水は頷いた。
(・・行け、と。)
意を決して歩き出したしのぶであったが、心中は穏やかではない。
無意識のうちにスカートが翻ることのないように、手で押さえる姿は自分でも不自然に過ぎることは容易に想像できる。
実際には僅かな、しかし心理的には限りなく長い距離を移動してドリンクコーナーに辿り着いたしのぶは、グラスをふたつ手に取って氷とウーロン茶を注ぐ。
と、その時、先程、オーダーしたドリンクを運んでいた男性スタッフが床にモップを掛けながら姿を現した。
(あ。嫌だ。あたし・・こんな格好なのに。)
男性スタッフは狭い廊下にモップを掛けながら、しのぶとの距離を徐々に詰めつつある。
ふしだらで無防備な格好を他人の視線に晒さない為には、早く清水の待つ個室に戻るしかないが、ここでまた新たなハードルに気付く。
(スカート・・手で押さえられない・・。)
室内である為、風でスカートが翻ることは有り得ないが、一歩、また一歩と歩を進めるたびに僅かではあるがスカートの生地が揺れてしまう。
だが今のしのぶにとっては、たったそれだけのことが死活問題に感じられる。
振り返れば、男性スタッフは徐々に近付いてきており、彼の視野に入るのは躊躇われるし、さりとてグラスをひとつずつ二回に分けて運ぶことは、この格好で廊下に滞在する時間が倍になることを意味する。
(・・仕方・・ない。)
左右の手にグラスをひとつずつ持つと、少しでもスカートの生地が揺れないように小刻みに歩を進めるしのぶの太腿を、溢れた蜜が膝の辺りまで伝う。
個室まで残り数歩を残す距離まで辿り着くと、内側から清水がドアを開け、しのぶを室内に招き入れる。
「お帰り。どうだった?」
(・・どうだったも何も・・。)
しのぶは無言のままグラスをテーブルの上にグラスをふたつ置くと、太腿を伝う蜜の処理を考える。
このままではスカートを汚してしまうし、一度トイレに行って拭うしかない。
「・・あの・・トイレに・・。」
「え?また?」
「・・・。」
確かに先刻トイレに行ってから一時間も経っていない。
何もかも見透かしたような表情を浮かべたまま、清水が言った。
「トイレに行く理由は何?正直に言ってごらん。」
「・・・・。」
単なる自然現象だと告げようか。
だが既に逡巡をする時間が生じてしまった時点で嘘をついていることは明白だ。
観念したしのぶはグラスに口を付け咽喉を潤すと、本当の理由を途切れがちに告げ始める。
「・・濡れて・・このまま座ったら・・スカートが・・・汚れちゃう・・。」
言い終わってから初めて、自分がスカートを汚す程の蜜を溢れさせている、と申告したも同然であることに気付く。
「ふんふん。そんなに濡らしてるんだ?」
清水はしのぶが脱いだショーツを手に取り、しのぶに向かって差し出しながら言い放つ。
「これで拭けばいいんじゃない?」
屈辱的であった。
しのぶ自身が身に着けていたショーツを雑巾代わりに使えと言うのだ。
「・・そんな・・酷い・・。」
「それで拭けば、有馬さんがどれだけ濡れてるか分かるよね?」
「・・・」
ショーツを手にドアに視線を向けるが、そんなしのぶの考えを察したのか、清水はしのぶを押し留める。
「ここで拭けばいいよ。」
「・・ここ・・で?」
「そこの角で後ろを向いて拭けば俺には見えないよ。」
最早、選択の余地は無かった。
しのぶは部屋の角に移動すると清水に背を向けスカートを捲り、左右の膝の辺りから秘裂にかけての太腿をショーツで拭い始める。
しかし拭っている間にも、僅かではあるが蜜は溢れ続けているのだろう、その作業が終わるまでには思った以上に時間を要してしまう。
スカートを直し、振り向いたしのぶに向かって清水が手を差し出してきた。
「?」
「いやぁ。どれくらい濡れてたのかなぁって。」
しのぶは覚悟を決めた。
ここまで来てしまったのならば、いっそのこと堕ちる処まで堕ちてしまおう。
清水は手渡されたショーツを手にした途端、それでも折り畳まれていた布地を広げ始める。
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