不意に笑い出すしのぶの姿を見た者は、誰もがしのぶの正気を疑うであろう。
しかも笑いながら留め処なく涙を流し続けているのだから尚更だ。
「・・笑っちゃう・・よ・・・ね・・。」
しのぶは全てを理解していた。
『それには魔法が・・いやさ、呪いがかけてある・・。』
老婦人の思惑を。
そして、その思考の精度の高さを。
何よりも老婦人の掌の内側で弄ばれていた事実を。
『呪い』は性具に仕掛けられたタイマーではなく、しのぶ自身に仕掛けられていたのだ。
「あたし・・どんな想いを・・しながら・・今日・・今まで・・家まで・・こんな格好で・・・」
しのぶは嗚咽を堪えながら呟く。
老婦人は精度の高い予想に基づき、適切な処置をしたと言えるであろう。
しかも、その処置は安全を配慮したものであったとも言えよう。
だが、しのぶにとっては弄ばれた以外の何物でもない。
釈迦の掌の内を必死になって翔ぶ孫悟空。
踊れば踊るほど哀しい道化師。
そういえば道化師の化粧には涙が描かれていることがある。
乙女の、いや清純とは程遠い位置には居たものの、女心をズタズタに引き裂くに等しい仕打ちであった。
(・・少し・・痛い・・。)
しのぶの秘部に他人の指が触れたのは何年ぶりのことであろう。
中学生二人、老婦人に触れられ、最後には性具に貫かれたことにより生じた僅かな痛みを宥めるように指先で秘裂に触れると、乾きつつある粘りが指先に付着する。
(・・舐めたんだ・・よね・・。)
しのぶに触れた少女の指先に付着した蜜。
はしたない液体を自らの舌で舐め取った時の屈辱が蘇る。
しのぶは顔の前にかざした指を口元に近づけると、口を開き舌先で指を舐め始める。
(・・変な味・・。)
味がしなくなると再び秘裂に指を這わせ、はしたない粘りを掬い、舐め、を繰り返す。
何度も繰り返すうちに粘りを掬う指がもたらす刺激、そして僅かに指先に付着する唾液により、しのぶは潤いを取り戻す。
思い切って中指を口に含み唾液を絡ませると、秘部に指を這わせ、ゆっくりと中指を挿入するしのぶ。
(ぁあ。あたしの中・・・熱い・・それに・・柔らかい・・締めつけ・・る・・。)
充分に解ぐされた細かな襞は易々としのぶの指を受け容れると同時に、抜けることを拒むようにきつく締まる。
性具の動きを思い出しながら、指を捻じり、掻き混ぜ、前後に往復させると卑猥に湿った音が生じる。
「あっ!」
小さな喘ぎとともに軽い絶頂を迎えると、しのぶは息を弾ませながら余韻を味わう。
その時、ふと眼についたのは傍に転がっていた性具。
しのぶは性具を手に取ると顔の前にかざし、軽く開いた口の中で舌の先を尖らせた。
性具に付着した蜜は完全に乾き、口を近づけると微かな異臭がする。
(・・あたしの・・恥ずかしい・・匂い・・。あそこも・・・こんな匂い・・なのかな。)
自分の体液から生じる異臭に恥じらい、そして微かな嫌悪を抱きつつ、性具に舌の先を僅かに触れさせる。
しのぶは性具に付着した汚れを丹念に舐め取り始めた。
ぴちゃぴちゃ・・・
仔猫がミルクを舐めるような湿った音ともに一通り性具の汚れを舐め取ると、しのぶは口を大きく開き性具を唇に近づける。
(・・フェラチオ・・。)
何年かぶりに硬く反り返ったモノを頬張り、舌を這わせ、唾液を絡ませるが、不慣れな唇からは、溢れた唾液が顎を伝い首筋まで流れてしまう。
いつの間にか股間に潜り込んだ片方の手は、秘裂に沿ってクリトリスから膣までを這い回る。
ぴちゃ、くちゅ、ぴちゃ、くちゅ
二種類の湿った音を発しながら、しのぶは男性器を頬張りつつ、別の人間に秘部を嬲られている妄想に取り憑かれたまま、自慰に耽る。
それは経験したことは勿論、想像すらしたことのない複数人との性行為を思い浮かべながらの自慰行為であった。
(・・誰かに・・滅茶苦茶にされたい・・。ううん、それだけじゃない。滅茶苦茶に・・されているところ・・見て欲しい・・な。)
充分に唾液を絡ませた性具から唇を離し、暫し迷った挙げ句、強度調整用の目盛りを2に設定。
老婦人が持たせてくれた紙袋から乾電池を取り出し、セットし終わると股間に当てる。
「う・・・ん・・。」
微かな抵抗は感じたものの、性具は概ねスムーズに体内に収まった。
しのぶが性具のスイッチをONにすると同時に、脈動し始めた性具は、しのぶの内側に潜む牝を呼び覚ます。
「あっ!うん!あ、ダメ!まだ嫌!」
あっという間に絶頂を迎えそうになる寸前、しのぶは精一杯の理性を振り絞り、性具を引き抜いた。
快感の余韻を惜しみつつ荒い呼吸を整え終わると、しのぶは性具を再び頬張り、付着した蜜を舌で丹念に舐め清める。
舐め終わると目盛りを3に設定し、再び挿入しスイッチを入れる。
しのぶは快楽を貪る獣と化していた。
正確には生身の男性器ではなく擬似的な代替品、性具により、満たされない性生活を補填しているという惨めさに対して、倒錯的な興奮に酔い痴れているのだ。
(・・あたしみたいな女には・・お似合い・・なのかな・・。)
あたしみたいな女。
意識こそしていないものの、しのぶは自分の容姿に対して密かな劣等感を持っていた。
不美人なわけでは決してなく、むしろ整っていると言って良い顔立ちなのだが、しのぶ本人の地味な性格と表情の乏しさも手伝って暗い印象を与えがちであった。
体型についても華奢で肉の薄い躯は成熟や豊満からは程遠く、小ぶりだが形の良い乳房も服を脱ぐまでは分からない。
結果的にしのぶは自分の容姿、正確にはしのぶ自身の女としての外見的な魅力に対して劣等感を抱き続け、その劣等感が故に非社交的な行動を取りがちであるという負のスパイラルに陥っていた。
(・・次は・・)
絶頂を迎える寸前に性具を引き抜き、舌で清めると強度を調整し挿入する、そんな行為を繰り返 す。
既に目盛りは4を経て次は最大値となる5。
だが、尽きせぬ快楽と恥辱に対する欲求とは裏腹に、肉体は既に限界を迎えつつあった。
(・・痛い・・。)
見ることこそ叶わないものの、しのぶの粘膜は腫れ上がり、途切れることのない鈍痛を放っている。
無理もない。
夢中になって何年ぶりかの性器への挿入行為を、しかも男性器を模したとはいえ、人工的な異物を繰り返し挿入しているのだから、生じる負荷は想像に難くない。
(・・それに・・暑い・・。)
いつの間にかベストとスカートを脱ぎ去り、ブラウスのみを身に付けているしのぶ。
秋の夕暮れ。
冷たい空気に満たされた室内でありながら、大量の汗により、全身に水を被ったようにブラウスは肌に貼り付いて素肌が透けて見える。
そしてブラウス越しに透けて見える素肌に絡む幾条もの黒い轍の交錯。
老婦人に施された轍はしのぶの躯だけではなく精神を縛っており、その轍は可視化された呪いの象徴といっても過言ではなかった。
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