「そういう他人に言えないような趣味を持つ人はね、意外といるもんなんだよ。だけどね・・・」
今日までは何も無かった、明日からも何も無いかもしれない。
だが、その幸運がいつまでも続くとは限らず、続くとも思えない。
「酷いヤツに知られたら・・・分かるかい?」
「・・・・」
しのぶにとっては耳の痛い話であった。
リスクは充分理解している。
何度も止めようとして止められない。
しかも今日は嘗て経験したことのない刺激を味わってしまったのだ。
一ヶ月?半年?
暫くは自重して思い出し、妄想に耽りながら自慰に耽けることで我慢出来るかもしれない。
「・・でも・・もう・・。」
自分が後戻りが出来ない状況にまで至ってしまっていることにしのぶ自身、確信があった。
俯くしのぶを前に溜め息をつくと、老婦人は一枚のカードを差し出す。
「?」
「今日、これから・・、」
老婦人の指示に従って家に帰れというのだ。
そして家に帰り着いて、それでも考えが変わらないのであれば。
「そのカードのURLにアクセスしてごらん。」
全てはしのぶの自由だと老婦人は言う。
今、このまま帰るも良し、老婦人の提案に従うのも良し。
勿論、帰宅の途中で、気が変わることだってあるだろう。
「どうするね?」
「・・・・・」
得体の知れない正体不明の老婦人。
普段のしのぶであれば老婦人の提案を受け容れることなぞ、到底出来なかったであろう。
普段であれば、だ。
「・・分かりました。・・お願いします。」
カラカラに乾いた咽喉の奥から声を絞り出すようにしてしのぶは答えた。
後悔するかもしれない、だが、このまま帰れば後から別の意味で後悔するだろうという予感、いや、確信がある。
その確信がしのぶの背を強く押したのであった。
「ふん。それじゃ始めようかね。」
そう言って立ち上がった老婦人は指示を始める。
「今、この瞬間からこの店の中ではノーはないよ。イエスだけだからね。」
「・・はい。」
老婦人に見下ろされながら下される指示には一切、反駁の余地は無い。
しのぶは覚悟は既に決まっていた。
「まず、そこに立って服を脱ぎなさい。全部だよ。」
「・・・・・」
無言のまま、震える手で服を、下着を、しのぶは脱ぎ始める。
最後にストッキングから脚を抜き終わり、老婦人に一糸纏わぬ姿を晒す。
満足げな表情を浮かべた老婦人の次の指示に従い、応接セットの脇に移動する。
「これをね・・・」
デスクの引き出しから取り出した紐状の何かを手にした老婦人は、しのぶに近寄り手にした幾重にも束ねられた何か。
それは直径五ミリ程の伸縮性のある黒く長い紐。
その長さは恐らく五メートル、いや、十メートル近くあるだろうか。
「少し足を開いて。そう。それから両手を水平に広げなさい。」
『大』という漢字を模したような姿勢をとると、しのぶの横に立った老婦人が、手にした紐に結び目を幾つか作り始めた。
結び目の間隔は、ある時は五センチ、ある時は二十センチと老婦人なりの基準に沿っているらしく均一ではない。
「始めるよ。」
準備が整ったらしい老婦人は、不規則な結び目のある紐をしのぶの躯に掛け始めた。
下腹部を起点に腹部、乳房の間、左右の肩に引っ掛けると首の後ろで交差させてから両脇の下を潜らせる。
まるで蜘蛛が捕らえた獲物に糸を巻き付けるように、手際良く作業を進める老婦人。
(・・これって・・。)
最後に僅かに余った紐を処理した老婦人は誰にともなく呟く。
「・・腕は・・鈍っちゃいないようだね・・。」
老婦人はオフィスの隅から、ブティックにあるようなキャスター付きの鏡を転がしながら移動させると、しのぶの正面、全身が映る位置に置いた。
鏡に映ったしのぶの姿、それは下腹部から胸元までを何度も交錯する黒い轍により彩られている。
しかも交錯した轍はしのぶの牝の部分、、乳房を、乳首を、股間の翳りを、強調していた。
(・・何?・・これって・・緊縛・・?)
あまりにも煽情的な己の姿を眼にし、立ち尽くすことしか出来ないしのぶ。
「それから・・」
老婦人は性具を手にしのぶの股間に性具の先端を充てがうと、ゆっくりと捻りながら挿入を開始するが、乾き始めていた秘部は受け容れようとしない。
「しょうがないね。」
さもないように言うと、老婦人はしのぶの正面に立って乳首を口に含み舌の先で転がし始める。
同時に右手を股間に伸ばし、もう片方の乳首を左手で撫で始めた。
時間にして僅か数分の愛撫。
あっという間に充分に潤ったしのぶから身体を離すと、老婦人は三度目の挿入を開始した。
ずぶずぶずぶ
湿った淫らな音とともに呑み込まれていく性具。
「はぅぅぅっ!」
最深部まで埋め込まれた性具が燠火を掻き立てるように、鎮まっていたしのぶの興奮を煽る。
だが、しのぶの興奮とは裏腹に、性具はビクリともせずに沈黙を守り、それ以上の昂ぶりをもたらさない。
「物足りないんだね?」
「・・いえ、そんな・・」
「いいかい?よくお聞き。それには魔法が・・いやさ、呪いがかけてある・・。」
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