「・・あたしが選んであげようか・・?」
老婦人の言葉を耳に顔を見合わせる二人。
黒い光沢を放つ生地で出来た高価そうな、しかし趣味の良いワンピースに身を包み、長い白髪を首の後ろで束ねて背中に流した華奢な姿。
若い頃は清楚な美人、年月を経た今は枯れた美しさを身に纏う上品な老貴婦人といった風情。
「こっちにおいで。」
穏やかな、しかし有無を言わせぬ口調に気圧されながら後に続くしのぶと取り残される清水。
連れて行かれたオフィスのドアを開けると、そこには大きなデスクと書庫があり、応接室を兼ねているらしくソファとテーブルが置かれていた。
「他には誰もいないから安心していいよ。」
所在無く立ち尽くすしのぶに向かい声をかけると、老婦人は何やら取り出してテーブルの上に置く。
「スカートはそのままで構わないから、下着とストッキングを少し下ろしなさい。」
外科医が手術の時に使うような極薄い素材で出来た手袋を片手に嵌めながら老婦人は続けるが、真意を測りかねたしのぶは戸惑いを隠し切れない。
(・・下着って・・言われても・・。)
勿論、しのぶの下腹部は剥き出しのままだが、例え同性とはいえ、その事実と経緯を理解してもらえる自信は無い。
「ほら、早く。」
しのぶは意を決して、この日、何度目かにスカートを捲り上げ、老婦人に下腹部を晒す。
「おや、そういうことかい。」
しのぶの剥き出しの下腹部を眼にした老婦人は、さして意外でも無さそうな表情を浮かべながらしのぶの正面に立つ。
老婦人は小さなボトルを手にし、手袋の上から指先に粘りのある液体を振り掛けると、しのぶの股間に手を伸ばした。
「え?あ!」
成す術も無く棒立ちのまま、しのぶは老婦人に身を任せるしか無かった。
老婦人の指先はしのぶの秘部を探り当てると、ゆっくりと奥に向かって挿入を開始する。
あっという間に最深部まで達した老婦人の指が、しのぶの内側で僅かに曲げられ、しのぶの内側を探り始めた。
「心配しなさんな。ここにも個人差があるからね。」
そう言いながら老婦人は指をしのぶに挿入したまま、恐らくは親指の腹をクリトリスに当てる。
と、不意にしのぶの下腹部に強烈な感覚が生じた。
「かはっ!」
思わず声を上げるしのぶに向かい、老婦人は優しく語りかける。
「大袈裟な。痛くは無いだろ?」
確かに痛くは無い。
痛みに似ているが痛みとは違う、むしろ初めて経験する類の快感。
この時は理解出来ていなかったが、しのぶは膣内のGスポットとクリトリスを内側と外側から刺激されていたのだ。
送り込まれる快楽を味わっていたのも束の間、老婦人は指を抜き去り、しのぶの股間から手を離す。
息も絶え絶えに余韻を味わうしのぶの正面から立ち去った老婦人は、手袋を外しオフィスの片隅にあるシンクで手を洗い始めた。
(・・今、何を・・されたの・・?)
手を洗い終わった老婦人は振り返り、ニヤリと笑いながら声を掛ける。
「スカートは戻していいよ。いつまでも晒しておくものじゃないだろう?風邪でも惹いたら大変だ。」
しのぶが慌ててスカートを直す様子を見ながら、くつくつと笑う老婦人は、オフィスから出て店内に向かう。
分からないままに後を追うしのぶの存在など意に介していないように、老婦人は陳列された性具を幾つか手にしながら品定めを始める。
「・・これだね。」
老婦人が手にしているのは標準的な、少なくともしのぶの基準では標準的なサイズとデザインの性具であった。
「お支払いは・・そちらさんで・・?」
そう言った老婦人の視線の先には、清水の姿があった。
決して安くはない会計を済ませる清水と老婦人の遣り取りを他人事のように見守りながら、しのぶは茫然と立ち尽くす。
老婦人は会計を済ませた性具の包装を解き、説明書の類いを取り纏め、小さな紙袋に仕舞う。
その性具をどうするというのだろう。
「有馬さん・・。」
その時、小声で清水が囁きかけてきた。
「ごめん。俺、新幹線の時間があるんだ。有馬さんはどうする?」
どうするも、こうするもない。
商品を受け取ったら自分も帰る旨を伝え、清水に礼を言うと、清水はそそくさと姿を消した。
だが、しのぶには奇妙な予感、それは確信と言っても過言ではない思いがあった。
(・・あたしは・・何かを期待している・・。)
二人の遣り取りを他所に老婦人は小さな何かを取り出すと封をきり、白く半透明なものを広げていく。
広げられた半透明で細長いもの、それはしのぶも目にしたことがあった。
(・・コンドーム・・?)
老婦人は取り出した避妊具を手際良く性具に被せ終わると、しのぶに向かって差し出しながら声を掛ける。
「さあ、いいよ。」
「え?」
「焦れったいね。」
しのぶの正面に立つと老婦人は、半ば強制的に性具をしのぶの手に握らせる。
そのままスカートの下に手を導くと、性具の先端を秘部の中心に寸分違わず浅く潜らせる。
「あ、待って。そんな・・ダメ・・。」
今日一日で受けた辱めの最たるものだった。
清水の眼の前で下着を脱ぎ、剥き出しの下腹部をスカートのみで隠して屋外を歩き、女子中学生に性器を嬲られた。
そして今は男性器を模した性具により、半ば強制的に貫かれようとしているのだ。
「おや?随分と御無沙汰だったのかい?」
老婦人の言葉に全身がカッと熱くなるしのぶ。
最後に男性と性行為に及んだのは何年前だろう。
もともと性交の際、挿入に痛みを感じることはあったが、しのぶは女として、ここ数年に渡る満たされない性生活が露見されたことに屈辱を感じていた。
(こんな・・こんなもの・・あたしだって・・。)
やや強引に性具の挿入を試みるしのぶに向かい、老婦人が窘めるように言葉をかける。
「女の大事なところだよ。もっと優しく、落ち着いて。少し捻じりながら挿れてごらん。」
アドバイスに従い、性具を握った手首を左右に捻じりながら挿入を試みれば、なるほど、徐々にではあるが、性具はしのぶ自身を押し広げながら奥に向かって進み始める。
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